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ドライバー不足の原因と対策|労働環境の改善に向けた取り組みが重要
ドライバー不足は、物流業界で慢性的に抱えている課題の一つで、収集運搬を行う事業者においても身近な課題です。
効果的な対策を立てられず困っている事業者は多いでしょう。
2024年4月以降は、状況がさらに悪化した可能性があり、原因を理解して、対策を講じることが大切です。
本記事では、ドライバーの現状とドライバー不足の原因と対策などを詳しく解説します。
以下の情報を参考に、ドライバー不足の全体像を理解し、対策のヒントにしていただければ幸いです。
< 目次 >
ドライバーの現状
冒頭で説明した通り、現在はドライバーが不足している状況と考えられています。
厚生労働省が発表している一般職業紹介状況によると、令和6年1月(2024年1月)時点における自動車運転従事者の有効求人倍率は2.72、職業計の有効求人倍率は1.21です。
ちなみに、平成26年1月(2014年1月)時点の有効求人倍率は1.93でした(職業計は0.99)。
また、国土交通省が発表している資料によると、道路貨物運送業の運転従事者数は、1995年の98.0万人をピークに減少を続けています。
2015年に76.7万人だった運転従事者数は、2030年に51.9万人まで減少すると推計されています。
さらに、ドライバーの平均年齢が高い点も見逃せません。
45~59歳の就業者が占める割合は、全産業が33.8%、貨物運送が45.3%です。特に、大型トラックの平均年齢が高いといえます。今後、より一層厳しい状況になるかもしれません。
参照元:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年1月分)について」
参照元:e-Stat「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
ドライバー不足の原因
ドライバー不足はどのような原因で引き起こされているのでしょうか。
考えられる原因を紹介します。
労働時間に対して賃金が低い
原因のひとつとして、労働時間に対して賃金が低いことがあげられます。
全日本運輸産業労働組合連合会が発表している資料によると、全産業と道路貨物運送業の出勤日数、労働時間、年間賃金は次のとおりです(2020年、規模30人以上)。
業種 |
出勤日数 |
労働時間 |
年間賃金(賃金総額) |
全産業 |
222.0日 |
1832.4時間 |
5,435(千円) |
道路貨物運送業 |
241.2日 |
2197.2時間 |
4,057(千円) |
上記をもとに算出した時間当たりの賃金は、全産業が2,966円、道路貨物運送業が1,846円です。
労働時間に対して賃金が低いことがわかります。
また、厚生労働省が発表している資料によると、運輸業、郵便業における短時間労働者の1時間あたり賃金は1,237円です。
この金額も、他産業に比べ低い水準といえます。
ドライバーは効率よく稼げないため、求職者から避けられている可能性があります。
参照元:全日本運輸産業労働組合連合会「トラック運輸産業の賃金実態」
長時間労働などの労働環境
労働環境が厳しい点も、人手不足に陥っている原因のひとつと考えられています。
一例としてあげられるのが長時間労働です。
公益社団法人全日本トラック協会が発表している資料によると、令和3年における大型トラックドライバーの労働時間は2,544時間、中小型トラックドライバーの労働時間は2,484時間、全産業平均の労働時間は2,112時間です。
大型トラックドライバーは全産業平均より年間432時間、月間36時間、中小型トラックドライバーは全産業平均より年間372時間、月間31時間、長く働いています。
人手不足で、1人のドライバーにかかる負担が大きくなっている点も見逃せません。
労働環境が厳しいため、新人を採用しても早期退職してしまうリスクがあります。
参照元:公益社団法人全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業現状と課題 2022」
交通事故の危険性がある
トラックが関係する事故は、メディアで大きく報道される傾向があります。
重大な事故につながりやすいためです。
交通事故の危険性を考えて、応募を控える求職者もいるでしょう。
国土交通省は「事業用自動車総合安全プラン2025」を定めて、事故の削減を目指しています。
全体目標は次のとおりです。
【全体目標】
- ・24時間死者数225人以下、バス・タクシーの乗客死者数ゼロ
- ・重傷者2,120人以下
- ・人身事故件数16,500件以下
- ・飲酒運転ゼロ
実際に「死者数+重症者数」が減っている点も見逃せません。
ただし、このような取り組みは業界外に伝わりにくい傾向があります。
危険なイメージも、ドライバー不足の一因と考えられます。
参照元:国土交通省「事業用自動車総合安全プラン2025 [計画期間:令和3~7年度] ~安全トライアングルの定着と新たな日常における安全確保~」
参照元:公益社団法人全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業現状と課題 2022」
10代や20代の若者がトラック運転手を志望しなくなった
10代、20代の若者がドライバーを志望しなくなったことも人手不足の原因としてあげられます。
厚生労働省が発表している資料によると、道路貨物運送業における29歳以下就業者の割合は10.0%です(全産業は16.5%)。
背景に、若者の車離れがあると考えられています。
株式会社KINTOが実施した調査によると、都内在住Z世代の57.2%、地方在住Z世代の34.2%が若者の車離れを自分事と感じています。
車に対する興味、関心の薄れが、ドライバー不足につながっている可能性があります。
参照元:PRTIMES「若者のクルマ離れ、都内Z世代の約6割が「自覚あり」一方で地方Z世代は約7割が「自覚なし」に」
ドライバー不足への対策
ドライバー不足にどのように対処すればよいのでしょうか。
事業者が検討したい対策を紹介します。
労働環境の整備
人手不足の主な原因としてあげられるのが厳しい労働環境です。
長時間労働の是正は不可欠な対策といえるでしょう。
応募者数の増加を考えた場合、利用しやすい有給休暇制度の導入など、一歩進んだ対策も求められます。
もちろん、給与体系の見直しも欠かせません。
業界内の給与水準だけでなく、他産業の給与水準も視野に入れて見直すことが大切です。
ドライバーを積極的に確保したい場合は、全産業平均に近づける必要があります。
若者への教育体制やキャリアパスの構築
ドライバー不足が深刻化している事業者は、即戦力になる経験者を採用したいはずです。
気持ちは理解できますが、どの事業者も経験者を優遇しているため採用のハードルは高くなります。
そこで検討したいのが、若年労働者を対象とする教育体制、キャリアパスの構築です。
成長できる環境や具体的な将来像を提示すると、未経験の若者から選ばれやすくなります。
長期的な視点で考えると、効果的な対策になるでしょう
広報活動に力を入れて発信
ドライバーの仕事はきついと考えられがちです。
このようなイメージが定着している中で、募集をかけても応募者を効率よく集められません。
まずは、イメージの改善に取り組むことが大切です。
具体的な活動として、SNSなどを用いた情報発信があげられます。
たとえば、長時間労働是正に向けた取り組みを紹介する、ドライバーの一日を紹介するなどが考えられるでしょう。
求職者が会社に親近感を抱いたり、求職者のドライバーに対するイメージが変わったりすると、就職先、転職先の候補になる可能性があります。
輸配送形態の変更
ドライバーの負担軽減につながる輸配送形態の変更も検討したい対策です。
具体的な対策として、転換拠点間の輸配送に鉄道や船舶を利用するモーダルシフトの導入があげられます。
長距離の輸配送を減らせるため、ドライバーの負担は軽くなるでしょう。
実際に導入する場合は、事業全体に与える影響も考慮しなければなりません。
ロボット技術や自動運転技術の導入
ロボット技術や自動運転技術の導入も効果的な対策になりえます。
たとえば、ロボット技術を導入して倉庫作業を自動化する、自動運転技術を導入して幹線輸送を自動化するなどが考えられます。
後者が実現すると、ドライバー不足が解消に向かうかもしれません。
自動運転技術を用いた幹線輸送については、2026年度以降の社会実装に向けて取り組みが進められています。
参照元:警察庁「自動運転トラックの社会実装に向けた現状と課題」
労働基準関連法令の遵守
当然ですが、法令を遵守することも欠かせません。
適切に対応できていないと、早期離職やトラブルを招く恐れがあります。
厚生労働省の発表によると、監督指導を実施した自動車運転者を使用する事業場(3,785事業場)のうち、労働基準関係法令違反が認められた事業場は83.0%(3,142事業場)、改善基準告示違反が認められた事業場は53.8%(2,037事業場)です。
参考に、主な違反事項を紹介します。
【労働基準関係法令違反】
- ・労働時間(47.6%)
- ・割増賃金の支払い(22.0%)
【改善基準告示違反時効】
- ・最大拘束時間(39.2%)
- ・総拘束時間(30.3%)
法令を遵守するだけで、他の事業者と差別化を図ることができます。
参照元:厚生労働省「自動車運転者を使用する事業場に対する令和4年の監督指導、送検等の状況を公表します」
デジタルツール導入などによる業務改善
デジタルツール導入による業務改善も、ドライバー不足対策になりえます。
導入を検討したいデジタルツールとして配車システムがあげられます。
配車システムとは
位置情報などを活用して、車両の運行計画や走行ルートなどを効率よく管理するシステムです。
具体的には、配送先データの管理、ルートの選定、配送状況の確認などを自動化できます。
配車システムは次の3タイプにわかれます。
タイプ |
概要 |
配車管理 |
配車計画の作成に適したタイプ。荷物と車両の情報などをもとに配車計画を効率よく作成できる |
自動配車 |
AIなどを活用して走行ルートを自動で作成するタイプ。荷物、車両、渋滞予測などを踏まえて走行ルートを作成するためトラブルを防ぎやすい |
車両管理 |
位置情報を管理、記録するとともに、走行ルート、走行状況をリアルタイムで表示するタイプ。データを日報の作成や安全運転教育などに活用できる |
適切に活用すれば、業務の負担を大幅に軽減できるでしょう。
2024年物流問題について
ドライバー不足に拍車をかけているのが物流の2024年問題です。
物流の2024年問題は、働き方改革にともない2024年4月からドライバーの時間外労働が年960時間に制限されることを受けて、引き起こされるさまざまな問題の総称です。
輸送能力が不足してモノをこれまで通り運べなくなるなどの影響が生じています。
ドライバー不足に悩む事業者は、2024年問題にも対処しなければなりません。
具体的な対策として、労働環境の見直しによるドライバー確保、DXの推進による輸配送効率の向上などが考えられます。
廃棄物処理・リサイクル業者が取り組めること
廃棄物処理・リサイクル業者も、ドライバー不足と無縁ではありません。
労働環境の改善に向けた取り組みとして、配車業務、計量業務の自動化、予約受付システムの導入による待機時間の削減などが考えられる対策です。
輸配送能力を確保するため、適切に対処していくことが重要です。
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ドライバー不足に備えて対策を講じましょう
ここでは、ドライバー不足の原因と対策などについて解説しました。
主な原因として、他の産業より低い賃金、厳しい労働環境があげられます。
したがって、給与体系の見直しや労働環境の改善が有効な対策になると考えられ、労働環境の改善に向けて取り組みたいのがDXの推進です。
具体的には、配車システムの導入などがあげられます。
業務を効率化すれば、働きやすい環境に繋がります。
新たにドライバーを確保しなくても、輸送能力を引き上げられる可能性がある点もポイントです。ドライバー不足解消に向けて、できることから対策を講じていきましょう。