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廃棄物処理法違反とは?主な例や罰則と具体的な事例をチェック
廃棄物処理法について、産業廃棄物の排出事業者や処理業者は正しく理解しておく必要があります。
具体的な内容や留意すべき点がわからず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、廃棄物処理法違反について押さえておきたいポイントを紹介します。
誤った方法で廃棄物処理の依頼や処理を行い、廃棄物処理法違反となれば顧客からの信用を損なう可能性があります。
場合によっては賠償責任に発展することもあるので、排出事業者・産業廃棄物処理業者ともによく確認しておきましょう。
< 目次 >
廃棄物処理法とは
廃棄物処理法とは、正式には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といい、「廃掃法」とも呼ばれ、正しい廃棄物の処理方法について定めています。
廃棄物を適正に分別する方法や、保管、収集に関すること、さらには運搬や再生、処分に関して定め、廃棄物が生活環境や自然に悪い影響を与えないように正しく管理することを目的としています。
廃棄物処理法の中では、ルールを破った場合の罰則などについても細かく規定されています。
そのため、産業廃棄物と関わりのある事業者は法律の内容を正しく理解し、それに則った形で事業を進める必要があります。
法律で産業廃棄物の処理に関して規定される以前は、不適切に処理・廃棄されるケースもありました。
不法投棄なども目立ちましたが、産業廃棄物の不適切な処理は大気汚染や公害など、さまざまな悪影響をもたらします。
このような背景から廃棄物処理法が制定されました。
廃棄物処理法違反となる主な例と罰則
廃棄物処理法違反とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。
ここでは、廃棄物処理法違反に該当する11の例と罰則について説明します。
無許可営業
産業廃棄物処理業者が営業を行う上で必要となる許可を適切に取得することなく営業した場合、無許可営業に該当します。
都道府県や政令市から、廃棄物の収集や運搬、処分に関する許可を得なければなりません。
以下の4つのうち、自社の事業内容に応じたものを取得することになります。
【産業廃棄物処理業者が取得できる許可の種類】
・産業廃棄物収集運搬業
・産業廃棄物処分業
・特別管理産業廃棄物収集運搬業
・特別管理産業廃棄物処分業
排出事業者は、依頼する産業廃棄物処理業者が許可を得ているか確認しましょう。
無許可で廃棄物処理業を営業した場合は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその両方が科されます。
なお、法人が業務を無許可で行った場合は、罰則の上限が3億円以下に引き上げられます。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条1・第32条1)※2025年4月27日確認
事業範囲の無許可変更
産業廃棄物処理業者は、事業範囲の許可を受けて営業をしなければなりません。
事業の範囲を変更するには、都道府県知事の許可を受ける必要があります。
この許可を受けることなく変更許可証の交付前に変更を実施した場合、無許可変更として扱われます。
たとえば、自社で許可を得ているのとは異なる廃棄物を受け取って処理した場合などが該当します。
事業範囲の変更に関して許可の申請をしていたとしても、変更許可証を受け取る前に実施した場合は無許可変更の対象です。
5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその両方が科されます。
排出事業者も、依頼する産業廃棄物処理業者の種類・地域が許可を得ている範囲内か確認しましょう。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条)※2025年4月27日確認
再委託禁止違反
再委託とは、委託契約を結んで排出事業者から廃棄物を受け取った処理業者が、その処理を第三者に委託する行為を指します。
産業廃棄物の再委託基準を満たしているものに関しては例外的に認められますが、該当するか否かは、十分な確認が求められます。
再委託禁止に違反した場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されることになります。
なお、排出事業者側でも再委託を禁止することをマニフェストに記載するなど、対応が必要です。
再委託先が無許可業者だったケースは、より悪質と判断され、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されることになります。
無許可業者も同様の罪が科せられます。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第7条14・第26条1-1・第25条1-6・第14条1)※2025年4月27日確認
措置命令違反
排出事業者や産業廃棄物処理業者が処理基準に適合しない収集・運搬・処分をおこなった場合、それらを改善するように市町村や都道府県知事から改善命令がくだされます。
これを無視して実行しない場合は措置命令違反です。
改善命令によって廃棄物の撤去を指示されていたものの、それらを長期間にわたって放置または所持し続けていた場合などが該当します。
措置命令違反と判断された場合は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条1-5)※2025年4月27日確認
不法投棄
産業廃棄物処理業者が廃棄物を捨てられる場所は、法律によって定められています。
定められた場所以外に廃棄することは禁じられており、不法投棄に該当します。
たとえば、産業廃棄物を山中に埋め立てた、トラックに廃棄物を積んだまま、車両ごと投棄するケースなどが該当します。
違反者は5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
排出事業者が排出物を不法投棄した場合も、同様の罰則が科されます。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条1-14)※2025年4月27日確認
不法焼却
不法焼却とは、許可されていない施設で廃棄物を燃やすことをいいます。
自社の敷地内であっても、許可された施設以外での廃棄物処理は法律で禁止されています。
敷地内にあるドラム缶の中でビニールを焼却したなどの事例が該当します。
排出事業者・産業廃棄物処理業者が違反した場合の罰則は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方です。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条1-15)※2025年4月27日確認
委託基準違反・受託禁止違反
排出事業者が排出した産業廃棄物を都道府県や政令市の許可を得ていない収集運搬業者に運ばせた場合は、委託基準違反に該当します。
収集運搬に関する許可を持つ業者であったとしても、適切に委託契約書を作成することなく産業廃棄物の収集や運搬を委託した場合は違法です。
また、このようなケースで収集運搬業者、処理業者が不正に委託を受けた場合は、受託禁止違反の対象です。
3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条6・第26条)※2025年4月27日確認
改善命令違反
排出事業者や産業廃棄物処理業者に市町村・都道府県知事・環境大臣からの改善命令が出された際、それに従わず放置した場合は改善命令違反の対象です。
たとえば、処理施設からの悪臭に対する住民の苦情を受け、改善命令が出されたにもかかわらず、対応を後回しにしているケースが該当します。
すでに紹介している「措置命令違反」については、生活環境の保全に支障をきたしているケースや、その恐れがある場合に支障の要因を取り除くことを求める命令です。
一方、改善命令違反については処理基準の不適合など、要求される基準や要求事項を満たしていないだけでも下される違いがあります。
該当する場合は5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられることになります。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第26条2)※2025年4月27日確認
産廃マニフェストの不交付
マニフェストとは産業廃棄物管理票のことであり、排出事業者は産業廃棄物の処理を委託する場合に、定められた事項を記載した上で交付しなければなりません。
排出事業者がこれを怠った場合、廃棄物処理法に違反することになります。
排出事業者はマニフェストを発行し、産業廃棄物処理業者はそれを確実に受け取ることが求められます。
違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられます。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第27条2)※2025年4月27日確認
管理票保存義務違反
管理票、つまりマニフェストは5年間保存することが義務づけられています。
しかし、排出事業者・産業廃棄物処理業者が保存期間内にマニフェストを紛失し、それを放置したために行政の調査に対応できなかった場合は、保存義務違反の対象となります。
1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第27条2)※2025年4月27日確認
無確認輸出
海外に一般廃棄物または産業廃棄物を輸出する場合、環境大臣の確認と許可を受けなければなりません。
これは、廃棄物を有価物として海外へ輸出する場合も同様です。
違反した場合は、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が科されます。
未遂の場合も同様の罰則が科されます。
参照元:e-Gov法令検索:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条12)※2025年4月27日確認
廃棄物処理法違反の事例
これまでに、多くの業者が廃棄物処理法違反で摘発されています。
ここでは、実際の事例を紹介しますので、参考にしてください。
再委託禁止違反・虚偽記載の事例
不適切な方法で産業廃棄物の処理を行った事例です。
産業廃棄物処理業者が、排出事業者から廃プラスチック類の運搬と処理についての依頼を受けました。
しかし、自ら処理せず、許可を持たない他者に再委託した不適切な事例があります。
排出事業者からマニフェストが交付されていたにもかかわらず、自社で処理したように虚偽の記載をして事業者に送付していました。
産業廃棄物保管基準違反の事例
排出された産業廃棄物は、適切に保管し、処理する必要があります。
しかし、自社で解体作業や収集運搬、産業廃棄物処理などを行う会社が不適切な対応をした事例があります。
処理業として受託した産業廃棄物を、自社の中間処理施設敷地内に長年にわたって保管し、堆積させていました。
県はこの業者に対して改善命令を出しましたが、履行されなかったため、許可が失効しました。
不適切に産業廃棄物を保管すると、火災などの恐れがあります。
実際に、この施設内で堆積された廃棄物から火災が発生しました。
参考:(PDF)環境省:資料3 廃棄物処理制度専門委員会報告書(案) 参考資料[PDF]
不法焼却の事例
金属くずやコンクリート片などの廃棄物を処理するにあたり、土の中に埋める、木くずを焼却するといった対処は不適切です。
こういった対応を行った会社の会長が、廃棄物処理法違反の疑いで逮捕されました。
参考:(PDF)日刊自動車新聞:タジマモーターコーポレーションの田嶋伸博会長、廃棄物処理法違反容疑で逮捕[PDF]
委託基準違反・受託禁止違反の事例
業務上不要となった廃棄物の処理を、許可を受けていない下請け業者に委託し、書類送検された事例です。
委託先となったのは建設会社など7社であり、各社の担当者に関しても同法違反容疑(受託違反)で書類送検されました。
参考:産経ニュース:豊島区課長ら24人書類送検 無許可業者に産廃処理委託疑い
逆有償取引による委託基準違反の事例
委託基準違反とは、許可を得ていない収集運搬業者に産業廃棄物を運ばせた場合に該当する罪です。
廃棄物処理の許可を得ていない子会社に有害物質を含む廃棄物の処理を依頼したとして、鉄鋼メーカーとその役員が書類送検されました。
この取引は、手元マイナスとも呼ばれる逆有償取引で行われていたのも特徴です。
逆有償取引について、詳しくは後述します。
参考:産経ニュース:鉄鋼スラグ不正処理 大同特殊鋼など3社書類送検 群馬
無確認輸出の事例
廃棄物の無確認輸出未遂罪が新設されて以来、初めて告発・罰則が適用された事例です。
貿易会社としてミャンマー向けに輸出申告を行った貨物のうち、使用済み冷蔵庫45台について報告徴収などを行ったところ、逆有償取引で引き取った上で野外保管し、特段の処理をせずに輸出を試みていたことが判明しました。
廃棄物と判断される冷蔵庫は、輸出する際には環境大臣の確認が必要です。
この手続きを行わずに輸出しようとしたことから問題となりました。
参考:近畿地方環境事務所:【お知らせ】廃棄物処理法違反に問われていた祝氏貿易株式会社の有罪が確定
廃棄物処理法違反は未遂でも処罰される?
実際に廃棄物処理法違反の対象となることをまだ行っていない「未遂」の状態では、罪に問われないように思う方もいるでしょう。
ですが、不法投棄に関しては「不法投棄未遂罪」という処罰があります。
適用される罰則は実際に不法投棄を行った場合と同様であり、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方です。
不法投棄は未遂であっても同様に裁かれることを押さえておきましょう。
不法投棄未遂罪の適用により、「不法投棄を試みたが、警察官に気付いて未遂に終わった」といった事態でも処罰が可能となります。
以前は、大量の廃棄物を積んだトラックが不法投棄を試みる場面でも、実際に投棄が行われなければ処罰の対象とはなりませんでした。
ですが、崖の上から大量に廃棄物を不法投棄するなど、実際に不法投棄が行われてからでは投棄された廃棄物を回収して片付けるのが難しいケースもあります。
行為が発覚した場合に片付けを命令されるのは不法投棄を行った当該者ではありますが、原状回復が図られるケースは稀です。
当該者による原状回復ができない場合は、行政代執行として税金を使って管轄自治体が対応することもありました。
このような事態を防ぐために、法改正の結果、新設されたのが「不法投棄未遂罪」です。
排出事業者は、不法投棄を行わない産業廃棄物処理業者や収集運搬業者を見極めて依頼する必要があります。
産業廃棄物処理業者や収集運搬業者についても、廃棄物処理法違反にならないように正しい処理が求められます。
なお、未遂であっても、実際の不法投棄と同等の罰則が適用される場合があります。
こういったケースでは過去にも不法投棄を行っている可能性が高く、それらが明らかになれば不法投棄未遂罪のみでは済ませられません。
廃棄物処理法違反を防ぐためのポイント
廃棄物処理法違反というと、悪質な業者が対象となるものというイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。
しかし、事例の項目でも紹介したように、違法であることに気付かずに廃棄物処理法違反を犯してしまうケースは少なくありません。
処罰された事実が知られると、取引先に迷惑をかけたり、契約を打ち切られたりする可能性があります。
廃棄物処理法違反を防ぐために、以下の3つのポイントを押さえておくことが重要です。
ポイント①委託する処分業者を慎重に選ぶ
具体的にどのようなケースで廃棄物処理法違反になってしまうのか理解しておくことが大切です。
実際の事例を調べておくと、同様のケースで処罰される事態を防ぎやすくなります。
排出事業者は、信頼できる産業廃棄物処理業者を選ぶ必要があります。
また、どのような行為が違反にあたるのか、排出事業者と産業廃棄物処理業者の両者が正しく理解しておくことが求められます。
たとえば、事例の中で紹介した「逆有償取引」に関することにも注意が必要です。
逆有償取引とは、販売によって利益を得るどころか、販売にかかるコストの方が高くなる取引を指します。
排出事業者が産業廃棄物処理業者に対し、スクラップを有価販売するケースを考えてみましょう。
有価販売を行って利益を得るはずが、排出事業者が赤字になるような取引であれば、それを逆有償取引と呼びます。
通常なら有価物として扱われるものが、逆有償取引に該当すると「廃棄物」とみなされる点に注意が必要です。
廃棄物の扱いになれば、廃棄物処理法の規制対象となります。
排出事業者が有価物として売却したつもりでも、実際には廃棄物処理を依頼していることになるため、依頼先は許可を得た産業廃棄物処理業者でなければなりません。
許可がない相手に渡した場合は、廃棄物処理法のうち委託基準違反・受託禁止違反に該当します。
排出事業者・産業廃棄物処理業者のどちらの立場からしても十分に注意と理解が必要です。
ポイント②廃棄物処理法に関する最新情報を入手する
廃棄物処理法は改正されることがあるため、最新の情報を入手し、理解しておくことが重要です。
改正が行われると基準が変わり、これまで罪に問われなかったことが罪になる可能性も考えられます。
過去には2010年と2017年に大規模な改正がありました。
今後も改正の動きには注意を払い、情報を集めておくとよいでしょう。
また、廃棄物処理法だけではなく、自治体が定めているルールについても把握しておくことが肝心です。
ポイント③従業員教育を徹底する
企業としては廃棄物処理法に違反するつもりは全くなかったものの、従業員の誤った判断やミスによって廃棄物処理法違反につながってしまうことも十分に考えられます。
たとえば、従業員の理解不足などにより排出物を取り扱えない処理業者に依頼してしまうようなケースもあるでしょう。
また、本来であれば書面で契約を結ばなければならない部分を口頭やメールだけで進めてしまい、結果として廃棄物処理法違反などのトラブルにつながることもあります。
違反したのは従業員だったとしても、会社はその責任を逃れることはできません。
これは、従業員個人の責任が問われるのではなく、両罰規定と呼ばれるものにより会社も罰を受けることになるためです。
従業員が個人の判断で会社に相談することなく廃棄物処理法に違反する行為を行った場合は、法人への罰則が科されない可能性があります。
ですが、いずれにしても万が一を防ぐための教育が必要です。
特に入社時は、注意点やリスクを十分に理解していない状態で仕事に臨むこともあるため、入社時教育を徹底することが重要です。
また、現場で発生したヒヤリ・ハット事例を共有するなど、定期的なミーティングを行うことも効果的でしょう。
適切な教育を行うことは、従業員を守ること、さらには会社を守ることにもつながります。
廃棄物処理法違反にならないように十分注意が必要
いかがだったでしょうか。
今回は、廃棄物処理法違反とはどのようなものなのかについて紹介しました。
廃棄物に関わりのある事業者はしっかりと理解を深めておきましょう。
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