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サーキュラーエコノミーとは?3Rとの違い、3原則や取り組みを解説

2023/09/13

2024/7/21

  • 資源循環
  • サーキュラーエコノミー
  • 循環型

サーキュラーエコノミーは、これからの経済・社会の方向性を考えるうえで重要な概念です。

しかし、比較的新しい取り組みでもあるため、まだまだ耳馴染みがない言葉でもありますよね。

 

本記事ではサーキュラーエコノミーの概要や推進するメリット・デメリット、取り組み事例などを網羅的に解説します。

自社での取り組みを視野に入れている担当者様は、ぜひ最後までご覧ください。

 

株式会社JEMSは経済産業省が設立した”サーキュラーエコノミーの実現を目指し、産官学の連携を促進するためのパートナーシップである「サーキュラーパートナーズ」”の会員です。

関連:「サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ」の立ち上げイベント・第1回総会を開催しました (METI/経済産業省)

 

※本記事でご紹介する内容には、JEMSの見解も含まれます。

 

企業のサーキュラーエコノミー・資源循環の取り組みをDXでサポート

目次

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーの概要図

出典:環境省_令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第2章第2節 循環経済への移行

 

サーキュラーエコノミー(circular economy)とは「循環経済」を意味する経済・社会用語です。

資源の投入と消費を抑制することで環境を保護しつつ、企業活動によって創造される価値の最大化をも図る、次世代型の経済活動を指します。

 

シェアリングエコノミーとの関係性

サーキュラーエコノミーの一つとして、シェアリングエコノミー(共有経済)があります。シェアリングエコノミーとは、個人や企業が所有する物的資源、スキル、時間などを共有する経済のあり方です。

 

民泊やカーシェアリングなどはシェアリングエコノミーの代表例であり、この取り組みによって無駄のない、より効率的な活動が実現します。

 

こうした、使用していない製品や資産の有効活用を図るシェアリングエコノミーは、サーキュラーエコノミーの一形態と捉えられています。

 

関連記事:シェアリングエコノミーとは|5つの領域、メリットと具体的な事例

 

リニアエコノミーとの違い

リニアエコノミーとは、直線的な経済活動を指します。

大量生産した後は、大量廃棄するという、いわば一方通行の経済活動です。

 

対してサーキュラーエコノミーは資源を効率的に活用して製品を製造するほか、それらのリサイクルにも重点を置いています。

そのため、環境資源の消費や経済的な無駄が最小限に抑えられており、この点においてリニアエコノミーと大きく異なります。

 

サーキュラーエコノミーと3Rの違い

3RとはReduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)の頭文字から名付けられた活動です。

製品の再利用や、資源の再活用、そして廃棄物の発生量の軽減を目的としています。

 

一方で、サーキュラーエコノミーは廃棄物や汚染を「減らす」のではなく、原則「ゼロにする」ことを目標としており、この点が両者の大きな違いです。

 

関連記事:3Rとは|具体的な取り組みと注目を集める背景

サーキュラーエコノミーの3原則

英国のエレン・マッカーサー財団は、20109月に「サーキュラーエコノミーの三原則」を提唱しています。

 

【サーキュラーエコノミーの三原則】

  • Eliminate waste and pollution(廃棄や汚染を出さない)
  • Circulate products and materials(製品と素材を循環させる)
  • Regenerate nature(自然を再生させる)

 

この三原則は、サーキュラーエコノミーの本質ともいえる重要な考え方であり、後述するバタフライ・ダイアグラムを理解するうえでも押さえておく必要があります。

 

関連記事:エレン・マッカーサー財団とは?サーキュラーエコノミーへの取り組みについて解説

サーキュラーエコノミーのバタフライ・ダイアグラム

サーキュラーエコノミーのバタフライ・ダイアグラム

出典:「循環型の事業活動の類型について | 経済産業省、環境省 」※「Drawing from Braungart & McDonough, Cradle to
Cradle (C2C)」より環境省作成

 

エレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの三原則に基づいて、当概念を図示した通称「バタフライ・ダイアグラム」を公表しています。

この図はちょうど、羽を広げた蝶のような見た目なので、こう名付けられました。

 

バタフライ・ダイアグラムには、上から順に、「資源」「経済システム」「(経済システムによってもたらされる)負の外部性」の3つの階層が存在します。

 

限りある資源を、適切な生産活動・経済システムによって利用していけば、廃棄や汚染といった負の外部性をなくせるというサーキュラーエコノミーの考え方を表したものです。

 

関連記事:バタフライダイアグラムとは?概要を徹底的に解説

 

関連記事:「ゆりかごからゆりかごまで」とサーキュラーエコノミーとの関係

サーキュラーエコノミーが注目される背景

ここでは、近年、サーキュラーエコノミーが注目を浴びている3つの理由を紹介します。

 

理由経済的なメリットがあるため

サーキュラーエコノミーによって、国や企業はコストを削減できます。

先述したように、サーキュラーエコノミーは資源・エネルギーの利用量を最低限に抑えつつ、廃棄物や使用済み製品の再利用による循環も推し進めていくため、非常に経済的なのです。

 

理由環境意識が高まっているため

サーキュラーエコノミーは、環境への負荷が低いというのも理由の一つです。

 

限りある環境資源を、効率的に活用するので、従来の経済活動と比べて地球にやさしいという特徴をもちます。

また、資源の再利用および循環も前提としているため、廃棄物問題や環境汚染が起きにくく、クリーンな経済活動が実現します。

 

理由持続可能な社会を創出しやすくなるため

世界の国々が目指している“持続可能な社会・経済活動”という方向性と、サーキュラーエコノミーの親和性が高いという理由もあります。

 

世界的にSDGsが叫ばれていますが、サーキュラーエコノミーを推進することで、持続可能な社会の創出が可能になります。

サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデル

サーキュラーエコノミーに関しては、アメリカに本社を置く世界的な戦略コンサルティングファームのアクセンチュア社が、より実践的なビジネスモデルを提唱しています。

続いては、このサーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデルを解説します。

 

【サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデル】

 

循環型サプライ

循環型サプライとは、資源を調達するフェーズにおいて、製品化されたあとのことも見据えて再利用、循環させやすいものを選ぶモデルです。

 

不要になった製品を再利用・再活用する技術や取り組みはもちろん必要ですが、そもそも循環させやすい資源や材料を選択すれば、これらがより一層スムーズになります。

また、再生可能な原材料を利用することで、調達コスト削減や安定調達にもつながるわけです。

 

回収とリサイクル

不要となった製品の回収およびリサイクルのスキームを確立させて、より高い価値を生み出すモデルが“回収とリサイクル”です。

サーキュラーエコノミーの三原則にもあるように、資源の再利用・循環を行ううえで欠かせない試みです。

 

具体的には、プラスチックボトルやパウチの回収とリサイクルなどが挙げられます。

なお、再利用は、生産・廃棄コストの削減にもつながります。

 

製品寿命の延長

サーキュラーエコノミーには、製品の寿命をできるだけ延ばそうというビジネスモデルもあります。

 

メンテナンスや改修によって製品の寿命を伸ばすことは、資源の節約や環境保護につながります。

なお、製品単位ではなく、個々の部品の新しい製品への再利用も、当モデルの一部です。

 

シェアリング・プラットフォーム

シェアリング・プラットフォームとは、従来のように特定の個人や企業がモノやスキルを占有するあり方ではなく、使っていない資産をみなで共有・共同利用するモデルを指します。

 

“必要なときに必要なだけ”利用できるので、無駄を排除でき、全体として効率の良い経済活動を行えるようになるのです。

 

サービスとしての製品

リースやサブスクリプションに代表されるように、製品をサービス化するというビジネスモデルもあります。

 

このモデルは、先述したシェアリング・プラットフォームと同様、消費活動において無駄が発生しにくいというのが特徴です。

また、提供者が製品の所有権を持ったままなので、回収やリサイクルもよりスムーズに行えます。

サーキュラーエコノミーのメリット

ここからは、サーキュラーエコノミーのメリットについて、一般的なものにくわえ、当社の見解に基づくメリットも解説いたします。

 

【サーキュラーエコノミーのメリット】

 

メリット資源の節約と脱炭素を図ることができる

サーキュラーエコノミーを推進するメリットとしては、資源を節約しつつ、脱炭素へのアプローチも可能であるという点が挙げられます。

これは、サーキュラーエコノミーに沿った製品の製造工程は、脱炭素が前提となっているためです。

また、製品の製造工程におけるサーマルリサイクル(熱循環)も、資源・燃料の節約と脱炭素を支えてくれます。

 

メリット②コスト削減につながる

先述したように、資源の節約やエネルギーの有効活用はコスト削減というメリットももたらします。

ほかにも、製品の製造工程を見直して効率化を図ったり、製品の耐久性を向上させたりすれば、中長期的にはコストを減らすことが可能です。

 

サーキュラーエコノミーは、コスト削減を主目的とはしていませんが、結果としてコストの節約にもつながるのです。

 

メリット③SDGs実現に貢献できる

資源の節約や製品の再利用は、SDGsの方向性とも一致します。

 

サーキュラーエコノミーは温室効果ガスを排出せず環境汚染もないため、クリーンで地球環境にやさしく、持続可能な社会・経済活動を目指すうえでは必須のモデルといえます。

 

メリット④自社の企業価値向上に貢献

率先してサーキュラーエコノミーを推進し、その旨を適切に公表することで、自社の市場価値の向上が期待できます。

 

サーキュラーエコノミーに関する取り組みの具体的内容を公表するのは、自社製品のサプライチェーン、ひいては事業活動の環境への影響範囲を開示することと同義といえます。

ステークホルダーにとっては、そういった情報を公開してもらえること自体が信頼につながりますし、同時に自社は説明責任(アカウンタビリティ)を果たすことができるのです。

適切に情報を開示し、説明責任を果たすことは、株価や市場価値の向上にもつながります。

 

また、サーキュラーエコノミーがまだ浸透していない業界では、先んじて取り入れることで競合との差別化につながり、業界内での競争力の源泉にもなり得る可能性があります。

 

なお、自動車業界においては、「2025年までに、欧州で販売する自動車には廃自動車由来の再生材を25%使用すること」が義務づけられており、実質的にサーキュラーエコノミーへの取り組みが必須条件となっています。

ほかの業界でも、このようにサーキュラーエコノミーへの適応が必須となることは今後起こり得るので、今のうちに取り組むことで、義務化された場合にも順応できるようになるでしょう。

 

メリット⑤資源調達リスクへの対応が可能になる

サーキュラーエコノミーを通じて、輸入に依存している資源を再利用できるようになれば、輸入への依存から脱却することができます。

 

財務省が公表しているデータをみると、日本は原料品や原料別製品の多くを輸入に頼っており、その輸入額は徐々に増えていることがわかります。

特に石油は、日本で使用するうち90%以上を輸入に頼っており、非常に依存度が高いのが現状です。

もしも国際情勢が悪化し、これまでのような輸入が叶わなくなった場合は、日本国内での製造にも影響を及ぼしてしまいます。

 

しかしサーキュラーエコノミーに取り組んで、既存の製品からリサイクルする前提で仕組みを構築すれば、大量に輸入し大量に消費するというスタイルから脱却し、輸入の抱えるリスクに対応することが可能になります。

 

参照元: 最近の輸出入動向/品目別輸入額の推移(年ベース)財務省

 

メリット⑥法規制強化時のリスクを軽減

リサイクルや廃棄をはじめとする、環境保全に関する法律は数多くあり、その法改正もしばしば実施されます。

サーキュラーエコノミーに取り組んでいれば、そういった法改正、ないしは規制強化の際にもスムーズに順応できる可能性があります。

 

2024年6月現在、日本国内においてサーキュラーエコノミーへの取り組みに法的強制力はありません。

しかし、環境への意識が世界中で高まりつつある昨今、資源の利用や廃棄物に関連する法規制が新たに制定されることも考えられます。

状況によっては、サーキュラーエコノミーの実施が、法のもと実質的に義務化される未来が訪れる可能性もあるということです。

 

サーキュラーエコノミーに先んじて取り組んでおくことで、万が一そのような状況になったとしても、柔軟な対応が叶います。

 

メリット⑦DXへの取り組みが加速

サーキュラーエコノミーの実施によって、自社のDX化が促進される場合もある、という副次的なメリットもあります。

 

サーキュラーエコノミーという新たな取り組みをスムーズに進めつつ、取り組みの品質を向上させるには、業務の効率化および“見える化”が必要です。

効率化や見える化には、DXツールが大いに役立ってくれるので、これをきっかけにDX化を進められる可能性もあるというわけです。

 

ここではサーキュラーエコノミーのうち、廃棄物を製品原料として再利用する“マテリアルリサイクル”を一例に挙げて考えてみましょう。

単にリサイクル材を用いて製品を製造するだけでも、マテリアルリサイクルは成立します。

しかしせっかく取り組むのであれば、「この材料はどこから来て、どのように加工され製品となるのか」という具体的内容の開示、つまりトレーサビリティまで視野に入れ、消費者からの信頼獲得につなげたいところです。

 

マテリアルリサイクルを新たに始めるうえで、効率を考慮しつつ、さらにトレーサビリティまで考えるのは、なかなか容易ではないことが想像できます。

そこで、サプライチェーン上にかかわる各企業とデジタル上で連携し、製造作業や生産後の流れを追跡できる仕組みを構築するとどうでしょうか。

製品が製造され、消費者のもとに届くまでの流れが明確になることで、効率的に業務を進められるようになるはずです。

原材料の仕入れ元など、リサイクル段階の情報もデータベースに蓄積されるので、その情報を消費者に開示するといった活用も可能です。

 

今回取り上げたのは、サーキュラーエコノミーに関するDX化のほんの一例ですが、このように新たな取り組みを成功に導くために、社内でDX化を進められるといったことが考えられます。

サーキュラーエコノミーのデメリット

サーキュラーエコノミーは、残念ながらメリットばかりではありません。

続いて、一般的にサーキュラーエコノミーのデメリットとされている内容とともに、当社の見解に基づくデメリットを解説します。

 

【サーキュラーエコノミーのデメリット】

 

デメリット高度な技術とノウハウを要する

サーキュラーエコノミーの要ともいえる資源の循環を実現するには、高度なテクノロジーが必要になります。

 

くわえて、製品の回収や再利用のスキームづくりのノウハウや、設備・インフラの整備など、推進にあたってのハードルは決して低くはありません。

そのため、他社と協業することにより、ノウハウを提供してもらう試みが不可欠です。

 

デメリット製品の機能やデザインの自由度が低くなる

サーキュラーエコノミーの実現を第一に据えた場合、製品の機能やデザイン、品質・仕様は少なからず制約を受けます。 

これは、資源の循環をスムーズに行う目的に沿うには、デザインや使用できる素材に制限がかかるためです。

 

特にリサイクル材は、新品の素材、いわゆるバージン材よりも品質面で劣るケースが多くあります。

そのため、もしリサイクル材を用いた製品開発でサーキュラーエコノミーを始めるのであれば、バージン材を用いるよりも品質や仕様が劣化する可能性を考慮する必要があるのです。

 

そのため、消費者に対してサーキュラーエコノミーの意義を周知したうえで、仕様に制約がある旨に対し理解を得ておきたいところです。

 

デメリット③サーキュラーエコノミー実施に伴いコストがかかる

サーキュラーエコノミーが掲げる資源の循環を生み出す、製品の回収やリサイクルにはコストがかかるというのも難点です。

 

製品回収やリサイクルに必要な仕組みづくりやその運営、設備の購入には多額の費用がかかります。

またそれだけでなく、リサイクル材を用いること自体に処理の過程でコストがかかるため、バージン材を用いる場合よりも高価になる場合も往々にしてあります。

 

そういった追加コストはどこでどう負担するのか、あるいは商品に転嫁するのか……といった部分を考えなくてはなりません。

とはいえ、継続的なサーキュラーエコノミーの推進により、中長期的にはコスト削減を図れるため、長い目で見て取り組む姿勢が求められます。

 

デメリット④リサイクル材の安定調達に課題がある

リサイクル材は、調達の面でも課題があるため、そういった側面でも制約を受ける可能性があります。

 

なぜなら、リサイクル材の製造は、まず“廃棄物の発生”という、事業者自身の意思ではコントロールできない、外部要因を前提とするためです。

原材料から計画的に製造・調達されるバージン材と異なり、リサイクル材はそもそも、廃棄物が発生しなければ調達することができません。

そのため、バージン材と比較すると、柔軟な需給調整がどうしても難しくなってしまうのです。

サーキュラーエコノミー推進のポイント

ここからは、実際にサーキュラーエコノミーを推進するうえでのポイントを、当社の見解をまじえて紹介します。

 

【サーキュラーエコノミー推進のポイント】

 

ポイント➀循環視点を持つ

サーキュラーエコノミーを推進するうえでは第一に、循環視点を持つことが欠かせません。

三原則にもあるように、廃棄や環境汚染を前提としない循環経済は、サーキュラーエコノミーの本質と言っても過言ではないためです。

 

循環視点を持ったうえで、これを実現させられる素材の選択や開発、テクノロジーの導入といったアクションを推し進めていく必要があります。

 

循環視点への向き合い方が明確になったら、自社のミッションとして明確に「サーキュラーエコノミーに取り組む」という旨を掲げましょう。

このとき、ただ宣言するのではなく、循環視点に基づいて、具体的かつ現実的に取り組みを考えている旨をしっかりと公表することが大切です。

宣言の時点でいかに説得力をもたせられるかが、社内外の理解につながり、その後の予算をも左右します。

 

ポイント②資源回収のルートを確立する

資源を回収、再利用するルートを確立するのも重要です。

消費者にとって不要となった製品を確実に回収したうえで、水平リサイクルや部品単位での再利用、原料へ戻すプロセスが構築されている必要があります。

 

この一連の仕組みづくりが完成されれば、従来の売り切り型のビジネスと一線を画すことができます。

 

ポイント③ステークホルダーとの協力体制を構築する

サーキュラーエコノミーは自社だけで完結できるものではありません。

そのため、ステークホルダーとの協力関係が欠かせないのです。

 

たとえば、製品に使用する素材を作るメーカーや、環境汚染や廃棄のない製造工程を実現するうえで必要なテクノロジーを提供してくれる企業、流通を担う関係各社などです。

これらのネットワークは一朝一夕に構築できるものではないため、サーキュラーエコノミーの推進は計画的に行わなければなりません。

 

ポイント社外への情報発信を行う

サーキュラーエコノミーの推進と並行して、その取り組みを社外へ発信するのも重要です。

社外へ自社の取り組みを発信すれば、社会全体としてのサーキュラーエコノミーへの意識を高められるとともに、消費者をはじめとしたステークホルダーの理解も得られます。

 

このように企業・ブランドイメージの向上にもつながるため、社外への発信を積極的に行う姿勢が大切なのです。

 

ポイント➄業界の動向を注視する

法規制の変化の可能性や、それに対する各社のスタンスといった業界の動向にも敏感になる必要があります。

今後起きる法規制の内容によっては、サーキュラーエコノミーへの対応が実質的にマストとなり得る可能性もあるためです。

 

たとえば、廃棄物処理法やプラスチック資源循環法は、業界を問わず意識したいところです。

また、個別の品目としては、下記の法令も該当する可能性があります。

 

【サーキュラーエコノミー推進にあたり意識したい法令の一例】

  • 小型家電リサイクル法
  • 容器包装リサイクル法
  • 家電リサイクル法
  • 自動車リサイクル法
  • 建設資材リサイクル法
  • 食品リサイクル法

 

いずれも、現時点で改正の情報が出ているわけではありません。

しかし今後は、上記のようにリサイクルに関連する法令に、サーキュラーエコノミーと関連性の高い考え方が取り入れられる可能性もゼロではないので、動向を注視するとよいでしょう。

 

ポイント⑥PDCAサイクルを回す

事業を成功に導くには、PDCAサイクルを回し、常に施策をブラッシュアップしていく必要があります。

もちろんサーキュラーエコノミーも例外ではありません。

 

製品の品質や消費者の反応、ステークホルダーからの評価などを定期的に確認し、必要に応じて新たな施策を立てていきましょう。

測定およびそれに基づく改善を繰り返していくことによって、当初は課題だった要素も徐々に改善し、いずれ大きなメリットを生み出すかもしれません。

サーキュラーエコノミーの課題

ここまで、サーキュラーエコノミーを推進するメリットやポイントをお伝えしました。

しかし、サーキュラーエコノミーを推進するうえでは、障壁となる課題も少なからず存在します。

 

ここからは、サーキュラーエコノミーが抱える5つの課題を当社の見解をまじえて紹介します。

 

【サーキュラーエコノミーの課題】

 

対応領域が広い

サーキュラーエコノミーの推進に際しては、ピンポイントな変革ではなく包括的な対応が求められます。

対応領域は、原材料の選定・調達や製品開発、製造工程における新しいテクノロジーの導入、および製品の回収と再利用をスムーズに行うための仕組みづくりなど、多岐にわたります。

必然的に多くの人員とノウハウ、関係者間の協議・調整、法制面の整備・変革の時間を要するわけで、決して簡単な目標ではありません。

 

協業先を見つけられない

先述した通り、サーキュラーエコノミーの推進に必要な対応範囲は多岐にわたるため、協業が不可欠です。

しかし、志を同じくする協業先を見つけられないということは、十分考え得ることです。

 

こうなると、循環視点での製品づくりに必要な素材や環境、ノウハウが得られなくなり、サーキュラーエコノミーの推進は困難となります。

 

最適なソリューションが選べない

自社でサーキュラーエコノミーに取り組むにあたり、“何が最善策なのか”を決めるまでに時間がかかる、という点も課題として挙げられます。

 

製品開発のフェーズひとつとっても、選択肢は無数にあります。

たとえば、候補となる原料・素材や、より環境負荷の低い製造工程を実現する技術、また効率的な製品の回収と再利用の手段など、いずれも決まった正解はありません。

 

サーキュラーエコノミー自体が比較的新しい考え方であるため、取り組み事例など、市場で入手できる情報も、まだまだ潤沢とは言い切れないのが現状です。

そのため、サーキュラーエコノミー推進にあたっての最適解を探すのはなかなか骨が折れる、という企業も数多くあるでしょう。

 

この課題を解決するには、まず“業界としての課題”および“自社の課題”を明確にし、現状を把握したうえで、“こう在りたい姿”つまり目標を設定することが大切です。

“その目標と現状のギャップは、どのようなところにあるのか”を分析すれば、具体的にどのような対策を講じればよいのか、何を選択すべきかが見えてくるでしょう。

 

なお、自社の課題の把握や、目標設定の段階から難航している場合は、コンサルティング会社にアドバイスを求めるのも一案です。

自社では気づけなかったポイントで、思いもよらぬ課題を抽出し、最適なソリューションを提案してもらえる可能性があります。

 

サプライチェーン全体の取り組みの可視化・透明化が十分でない

企業単体ではなく、サプライチェーン全体で、サーキュラーエコノミーへの取り組みを可視化していく仕組みも求められています。

 

たとえ特定の企業のみがサーキュラーエコノミーの取り組みを熱心に行ったとしても、社会全体の連携がなければ、試みは頓挫してしまうでしょう。

これを避けるためには、サプライチェーンを筆頭に、サーキュラーエコノミーへの取り組みの実態が可視化されて共有される必要があるのです。

 

消費者・市場の認識が追いついていない

消費者の理解が追いついていないという点も問題です。

サーキュラーエコノミーは比較的新しい概念であるため、取り組みそのものや、提供される製品・サービスが消費者の理解を得られない事態は往々にして発生します。

 

循環視点に立って開発された製品は、素材や機能などの自由度が、従来の製品に比べて制限されるという点も消費者に周知のうえ、納得してもらう必要があります。

 

消費者にサーキュラーエコノミーの意義を理解してもらえないと、これらの製品は市場に受け入れられず流通が難しくなります。

そうなれば、循環経済から早々と脱落してしまう企業も出てくるでしょう。

この問題は、サーキュラーエコノミーへの取り組みを始めるにあたって、最初に考えるべきかもしれません。

企業活動におけるサーキュラーエコノミーの必要性

企業にとって、サーキュラーエコノミーへの取り組みは大きな意味をもちます。

それは、先述した環境保全や、企業・ブランドイメージの向上に留まりません。

サーキュラーエコノミーは、資源の消費を最小限に抑えつつ、循環をも実現できるため、企業が直面している原材料不足といった現状を打破できる可能性があるのです。

 

昨今、多くの業界で原材料の不足が深刻化しています。

これに起因して価格が高騰しているほか、そもそも必要量が確保できずに製品の製造を中止するといった事態もめずらしくはありません。

 

このような状況において、サーキュラーエコノミーの推進は解決への切り札となり得ます。

さらに副次的な効果として、サーキュラーエコノミーの推進が、企業イメージにプラスの効果をもたらして、市場での競争力が高まるといったものも挙げられます。

 

サーキュラーエコノミーの市場規模

ドイツにある世界最大の統計調査会社であるスタティスタ社は、循環経済の市場予測を行っています。

当調査によると、循環経済の市場規模は2022年の時点で3,339億ドルでした。

 

今後は年率約20%の高い市場成長が見込まれており、試算のうえでは2026年に7,127億ドルもの規模になります。

 

このような市場予測の結果が物語る通り、サーキュラーエコノミーは今後ますます、私たちに身近なものとなってくるでしょう。

現在は過渡期ともいえる局面ですが、今後政府や企業、そして消費者の意識が変わるにつれて、その変革のスピードは加速していくものと思われます。

 

企業か個人かを問わず、今のうちから循環経済の潮流に適応する準備を始める重要性がお分かりいただけたでしょうか。

 

参照元:

PR TIMES「サステナビリティ消費が急成長 サーキュラーエコノミー(循環型経済)の市場規模が2026年に7,127億ドルに達するとStatistaが発表

 

サーキュラーエコノミーへの投資家の関心

お伝えしている通り、循環型経済へのシフトは着実に進んでおり、その市場のポテンシャルには注目が集まっています。

したがって世界中の投資家が、高い成長性を持つサーキュラーエコノミーへ関心を寄せている事実にはなんの不思議もありません。

 

環境や社会に配慮した企業へ優先的に投資を行うESG投資は、国内外で活発であり、投資額の総計は2020年の時点で約35兆ドルともいわれています。

これまで、ESG投資の対象は気候変動に関するものでしたが、現在はサーキュラーエコノミーに関わるファンドが形成されるなど、トレンドにも変化が生まれています。

 

このような動きのなかで、世界のマーケットからESGの資金を取り込むことが叶えば、日本におけるサーキュラーエコノミーの推進にも追い風となるでしょう。

 

これを実現するために、企業側としては、適切な指標・KPIの設定により、自社のサーキュラーエコノミーの達成度を客観的に示していく努力が必要です。

これにより、投資家の関心を惹き、金融機関との交渉も効率的に進めやすくなります。

 

一方で、政府には、投資家や金融機関との関係性を深めつつ、相互理解に努める姿勢が求められます。

取り組み開始からしばらくのあいだは、サーキュラーエコノミーの推進は企業の利益と結びつかないことも少なくありません。

そのため、政府からも国内外の投資家・金融機関に対してその旨の理解、および中長期的な視点での投資をよびかける必要があるのです。

 

官民が一体となって、国内でのサーキュラーエコノミーを推進し、成功事例を増やしたうえで、これを世界へ発信すれば、当運動のさらなる活性化につながるでしょう。

各国のサーキュラーエコノミーへの取り組み

最後に各国と我が国の、サーキュラーエコノミーへの取り組みを紹介します。

 

【各国のサーキュラーエコノミーへの取り組み】

 

オランダ

ヨーロッパ諸国は環境問題への意識が高く、早くから諸問題に取り組んできた国も少なくありません。

なかでも、地球温暖化による海面上昇の被害を受けやすい、低海抜国であるオランダは、2016年に、自国のエネルギー生産と温室効果ガスの削減に関する協定を公表しました。

具体的には、1990年比での温室効果ガス(CO2)の削減数値を、2030年までに55%、2050年までに8095%と定めています。

 

くわえて、資源の再生・再利用の重要性についても言及しています。

廃棄物を新しい原材料と捉えることで、温室効果ガスの削減とともに、新しい技術・雇用の創出も図るのが狙いです。

実際に、オランダ政府は古い石炭発電所の閉鎖計画を立案しています。

それどころか、オランダ最高裁は、気候変動による被害は人権侵害という解釈を示したうえで、自国政府に対して温室効果ガスの排出量削減を命じました。

 

また、政府だけではなく企業の熱心な取り組みにも要注目です。

オランダは、世界でも有数のジーンズ(デニム)愛好国であり、同国には「ハウス・オブ・デニム」とよばれる財団があります。

この財団は、多量の水を使用するジーンズの染色工程において、環境負荷の軽減に向けた研究へ資金を提供しています。

 

オランダは、サーキュラーエコノミーの推進にあたって、政府がイニシアチブをとり、民間の企業がそれに続いている良いモデルケースの一つです。

 

中国

著しい経済成長を見せる中国でも、サーキュラーエコノミーの推進が進んでいます。

 

中国国家発展改革委員会(NDRC)は、サーキュラーエコノミーへの取り組みに関する指針・目標をまとめています。

この「循環経済の発展に関する第145カ年計画(2021-2025年)」には、中国国内の資源循環体制の構築やカーボンニュートラルの2060年実現などが盛り込まれました。

また上記に付随して、グリーンデザインや、クリーン生産の促進、リサイクルシステムの確立など、詳細な指針も記されています。

 

具体的な数値目標について、下記をご覧ください。

 

【中国「循環経済の発展に関する第145カ年計画(2021-2025年)」に盛り込まれている具体的な目標】

  • GDPあたりのエネルギー消費量13.5%削減
  • 古紙利用量を6000万トン、鉄スクラップ利用を32000万トン、非鉄金属の再生量を2000万トン(2025年まで)
  • 水使用量を16%削減(2025年まで)
  • 資源循環利用による生産高5兆元
  • 2025年までに化石燃料の段階的廃止

 

経済発展の過渡期にある中国が、取り組みの意思を示したことは、サーキュラーエコノミーの国際的な普及を考えるうえでも、大きな意味をもちます。

 

参照元:Circular Economy Hub「中国、循環型経済に関する新目標を発表。資源循環利用による生産高5兆元を目指す

 

日本

まだまだ聞きなれない言葉であるサーキュラーエコノミーですが、国内でも取り組みの動きは徐々に広がりをみせています。

 

政府は、国内のサーキュラーエコノミーの市場規模は2030年には80兆円以上、また、グローバルな経済効果はなんと約540兆円にのぼると見込んでいます。

2015年に、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、ESG投資に関する署名を行ったのがきっかけとなり、現在は一般企業にもその波が広がっている最中です。

2020年には経済産業省により、「循環経済ビジョン2020」が策定されました。

 

民間では、鹿島建設株式会社が、建設現場で回収された作業服を回収・リサイクルのうえ、⾃動⾞内装材や屋根下に使用する防水材として再生しています。

この試みによって年間約6,500着の作業着がリサイクルされています。

 

国内外企業のサーキュラーエコノミーへの取り組み

ここからは、国内外の企業によるサーキュラーエコノミーへの取り組みを具体的に解説していきます。

 

【国内外企業のサーキュラーエコノミーへの取り組み】

 

ファーストリテイリング(ユニクロ)

ユニクロを運営している株式会社ファーストリテイリングでは、2020年に「RE.UNIQLO」をスタートさせました。
RE.UNIQLOは、不要になったユニクロの衣類を回収し、それを材料に新たに服を作る循環型プロジェクトです。

この取り組みの一環として、2019年に国内で回収した62万着のダウンを、再生・再利用した「リサイクルダウンジャケット」を2020年11月に販売しました。

 

このプロジェクトのスタートにより、2006年から進めていた「全商品リサイクル活動」が大きく進化したことになります。

RE.UNIQLOによって、余分な廃棄物やCO2排出量、資源使用量を削減し、より一層環境や社会に良いブランドを目指しています。

 

参照元:ユニクロ公式オンラインストア「プレスリリース

 

メルカリ

株式会社メルカリでは、サーキュラーエコノミーに対して、「循環型社会の実現・気候変動への対応」「地域活性化」をはじめとする、5つの取り組みを実施しています。

 

また、それとは別に、フリマアプリ「メルカリ」に対する取り組みも実施中です。

メルカリへの出品データを大学などへ無償で提供し、その後の研究結果を通じて循環型社会実現への貢献を目指しています。

 

さらに、製品を捨てないための行動を定着させるために、リユースできるメルカリエコバックを開発しました。

ほかにも、サーキュラーエコノミー推進団体への寄付も積極的に行っています。

 

参照元:株式会社メルカリ「Circular Economy Hub

 

Google

Googleは、持続可能な世界の実現に、サーキュラーエコノミーの加速が必要不可欠であるとの認識を示しています。
「Googleの決断によって、その未来への道が切り開かれる」との信念のもと、すべての活動に対して持続可能性を念頭に置いています。

 

また、Googleは、前述の京都市が加盟したとされる、エレン・マッカーサー財団のパートナーを務めており、同財団からヒントを得てGoogleのサーキュラー原則を設計しました。
この原則は、ビジネス全体での一貫性と再製造性の向上、さらに最大限の影響力を発揮できるように設計されています。

廃棄物と汚染を生み出さない設計によってプロダクトを作り出し、材料と資源をできるだけ長く使用できるような方法を模索しています。

 

参照元:Google「サーキュラーエコノミーに関する取り組み

 

NIKE

NIKEは、スポーツの未来を守るべく、炭素排出ゼロ、廃棄物ゼロを目指して「Move to Zero」に取り組んでいます。

 

Move to Zeroの例としては、2030年までに世界のサプライチェーン全体の炭素排出量を、30%に削減する取り組みが挙げられます。
これは、2015年に発表された、世界全体の温室効果ガスの排出量をゼロにする脱炭素化を目標とする国際協定「パリ協定」に即した取り組みです。

サーキュラーエコノミーが注目されている近年、すでにNIKE製品の75%に再生素材が使われています。
ほかにも、衣類や靴用途の化学繊維、靴のソールなどに、再生素材が活用されています。

 

「地球を守ることは、気候変動からスポーツの未来を守ること」という信念に基づき、これからもMove to Zeroの取り組みが進められることでしょう。

 

参照元:NIKE「気候変動に対するナイキの姿について

    NIKE「ナイキプロダクトの75%に再生素材が使用されていたことを知っていましたか??

 

こちらの記事では、その他にも国内外の企業を例にサーキュラーエコノミーへの取り組みを紹介しております。

関連記事:サーキュラーエコノミーの事例を国内外の企業を交えて紹介

サーキュラーエコノミーの推進により持続可能な経済活動が実現する

いかがでしたでしょうか。

本記事では、サーキュラーエコノミーをテーマとして、概要や推進するメリット・デメリット、各国の取り組み事例を紹介しました。

 

サーキュラーエコノミーは「循環経済」を意味しており、従来の一方通行型の経済活動とは異なる、持続可能な形で資源を利用する循環経済への移行を目指すものです。

 

結果的にコストの削減につながるという恩恵がある一方で、推進には国内の合意形成や、多くのノウハウが必要といった難題が立ちふさがります。

 

 


 

JEMSでは、サーキュラーエコノミーの実現に向け資源循環の価値証明サービス「Circular Navi」の提供を20224月に開始しました。

すでにプラスチックの資源循環をはじめとした実証実験などにご活用いただいています。

その他にも、一般廃棄物を削減するための回収量の見える化などさまざまな取り組みを支援しています。

 

今後も約30年にわたる廃棄物管理の分野で培ったノウハウとパートナーシップをもとに再生材や再生材利用製品の価値を最大化することで企業の循環型ビジネスの構築を支援していきます。

サーキュラーエコノミーに主体的に取り組もうとお考えの皆様のパートナーであり続けることを目指しています。

JEMSの取組事例はこちら

 


 

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