「ゆりかごからゆりかごまで」とサーキュラーエコノミーとの関係
2024/03/13
2024/6/5
サーキュラーエコノミーに取り組む際、おさえておきたいのが「Cradle to Cradle」と呼ばれる考え方です。
日本語に直訳すると「ゆりかごからゆりかごまで」となり、サーキュラーエコノミーにおいて原点ともいえる考え方を指します。
本記事では、Cradle to Cradleについて知りたい方のため、この言葉が指す意味や歴史、Cradle to Cradle認証などについて解説します。
実際にCradle to Cradle認証を受けている企業の例も紹介するので、認証の取得に興味がある企業の担当者様は、ぜひご覧ください。
Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)とは
Cradle to Cradleは「C2C」とも略されるもので、サステナブルなモノづくりに取り組むための基準でもあります。
ここでいう「ゆりかご」とは、地球や自然のことです。
地球や自然から生まれたものを廃棄するのではなく、再びゆりかごである自然界へ戻し、循環させる考え方が「ゆりかごからゆりかごまで」です。
イギリスでは生涯にわたって国が社会福祉を提供することを示すスローガンとして「ゆりかごから墓場へ」を掲げていました。
このスローガンをもじる形で生まれた言葉です。
Cradle to Cradleの歴史について
Cradle to Cradleは、1990年代に提唱されました。
提唱したのは、ドイツの科学者であるマイケル・ブラウンガード氏と、米国の建築家でデザイナーでもあるウィリアム・マクダナー氏らです。
また、マイケル・ブラウンガード氏が設立したEPEAと呼ばれるドイツ環境保護促進機関に所属する科学者によってCradle to Cradleの考え方が作り上げられました。
彼らが出版した著書の中で「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)」の考え方が提唱されています。
こちらの著書は2002年に出版され、日本語版も2009年に発売されているので、興味のある方は確認してみてはいかがでしょうか。
Cradle to Cradle認証とは
Cradle to Cradle認証は、EPEAが行っているグローバル環境認証です。
ベーシック、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナといった五段階に分かれた認証が行われています。
認証を得るための条件は、以下の5つです。
【基準を満たす必要があるカテゴリー】
- Material Health(原材料の健康性)
- Material Reutilization(原料・部品が再利用できること)
- Renewable Energy & Carbon Management(再生可能エネルギーの利用とカーボンマネジメント)
- Water Stewardship(水の適切な管理)
- Social Fairness(社会的な公正さ)
化学物質を使用する場合は人と環境に対してできるだけ害がないものであることや、製品を使用し終わった後も廃棄物ではなく資源として再利用できるように取り組んでいることなどが求められます。
また、製品の製造過程で出る温室効果ガスを抑えることや地域の水脈の汚染を防ぐこと、製品の生産で影響を受ける人々や自然環境を尊重した事業計画が立てられていることなども定められています。
いずれもサーキュラーエコノミーと深い関わりのあるカテゴリーです。
関連記事:サーキュラーエコノミーとは?3Rとの違い、3原則や取り組みを解説
Cradle to Cradle認証を受けた企業
どのような企業がCradle to Cradle認証を受けているのでしょうか。
ここでは、高ランクのCradle to Cradle認証を受けている企業を4つ紹介します。
Wolford
Wolford(ウォルフォード)は、オーストリア発の企業です。
タイツや肌着の販売を行っており、織物とその材料である繊維に関連した製品を扱うテキスタイル業界で知られています。
2019年にはリユースによってタイツを仕立てるオーロラコレクションが、Cradle to Cradle認証のゴールドを獲得しています。
オーロラ製品は、すべてCradle to Cradleゴールド認証を受けており、どの製造過程でも環境に悪影響を与えない素材であることが保証されているのも特徴です。
2025年までに50%の製品をCradle to Cradle認証に切り替えていくことを目指しています。
出典:Wolford
G-STAR RAW
G-STAR RAW(ジースター・ロゥ)は、オランダのデニムブランドです。
世界初となるCradle to Cradleゴールド認証のデニム生地を発表しています。
コレクション「Cradle to Cradle Certified」は、環境に優しい自然な手法でデニムを染色していることに加え、使用している素材も環境に配慮されたものです。再生可能コットンを75%、リサイクルコットンを25%使用しています。
また、生地だけではなく、ボタンやラベルといったものを含めた製品全体が認証を受けている製品も販売しています。
出典:G-STAR RAW
H&M
H&Mはスウェーデン発のアパレルメーカーです。
H&Mの中でもベビー服を取り扱う「H&M Baby」のコレクションがCradle to Cradleのゴールド認定を受けています。
オーガニックコットン100%で作られているのが特徴です。
H&Mのベビー服は、赤ちゃんとともに成長できるデザインであることにこだわっています。
ゴールド認定を受けたコレクションに関してもウエストが調節可能で、成長に合わせられるようにデザインされました。
出典:H&M
田川産業
田川産業は、1924年創業の漆喰・珪藻土メーカーです。
環境への取り組みに非常に力を入れており、日本企業としていち早くCradle to Cradle認証を取得しました。
田川産業の主力製品である漆喰のほか、新素材のLimixやLumie cube、ecopoといった4製品分野で取得しています。
中でもLimixに関しては原料構成が自然素材のみで作られていることや、製造過程において焼成が必要ないためCO2が抑制できること、光触媒を利用することによってクリーンエネルギーによる空気質浄化がなされることなどが評価されています。
出典:田川産業
Cradle to Cradleの今後の展望
サーキュラーエコノミー実現に向けて取り組む企業が増えていることもあり、今後はCradle to Cradleの考え方もさらに広がっていくことでしょう。以前は、モノを生産するにあたり、大量に生産し、余ったものや使い終わったものは大量に破棄する形になっていました。
ですが、これからはCradle to Cradleが当たり前の考え方になっていくと思われます。
今後、環境問題に取り組みながら製品の開発や事業展開を目指す際は、Cradle to Cradleの考え方に沿った形で取り組んでいくことが求められるでしょう。
今後はCradle to Cradleを目指すための取り組みが必要
いかがだったでしょうか。
本記事では、サーキュラーエコノミーとかかわりの深い「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)」について紹介しました。
まだまだ日本ではCradle to Cradle認証を受けている製品は少ない状況ですが、取得を目指す企業が増えていくのではないかと予想できます。
JEMSでは、企業のサーキュラーエコノミーへの取り組みに貢献するソリューションを提供しています。
Circular Naviは、企業のサプライチェーンのトレーサビリティーや再資源化率の可視化などによって、製品ごとに環境価値を提示することができます。
ぜひ、Circular Naviをご活用ください。