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コラム

産業廃棄物処理法(廃掃法)とは?改正点と業務で注意したいポイント

排出事業者は、産業廃棄物処理法に従い廃棄物を処理しなければなりません。

ルールを破るとペナルティーを課される恐れがあります。

 

この点を理解していても、具体的な内容がわからないため対応できないと感じている方がいるでしょう。

 

本記事では、同法の目的や改正点、注意するべきポイントなどを詳しく解説しています。

 

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産業廃棄物処理法(廃掃法)とは?

 

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」を産業廃棄物処理法または廃掃法といいます。同法の目的は、第一条で以下のように定められています。

 

この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

引用:e-GOV法令検索「昭和四十五年法律第百三十七号 廃棄物の処理及び清掃に関する法律」

 

産業廃棄物処理法における廃棄物は「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分かれます。

 

一般廃棄物は産業廃棄物以外の廃棄物です。

 

産業廃棄物は、事業活動で生じた廃棄物のうち政令で定める廃棄物(燃え殻・汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリ・廃プラスチック類など)、輸入された廃棄物、入国する者が携帯する廃棄物を指します。また、産業廃棄物のうち、健康・生活環境に被害を及ぼす恐れがあるものを特別管理産業廃棄物といいます。

 

同法第三条で、事業活動で生じた廃棄物は事業者自らの責任で処理しなければならないことが定められています。

 

もちろん、所定のルールに従い運搬・処分を収集運搬業者・処理業者へ委託することも可能です。

ただし、最終処分を終えるまでは、排出事業者に責任があります。

産業廃棄物処理法の定めに従わず廃棄物を処理などした場合、罰則を科される恐れがあるため注意が必要です。

 

参照:e-GOV法令検索「昭和四十五年法律第百三十七号 廃棄物の処理及び清掃に関する法律」

 

産業廃棄物処理法(廃掃法)の改正

 

産業廃棄物処理法は、昭和45年12月25日に公布されました。

以降、廃棄物処理問題に対処するため、複数回の改正を繰り返しています。

 

平成12年以降に行われた改正の概要をまとめると次のようになります。

 

【改正の概要】

平成12年 廃棄物減量化の推進、産業廃棄物処理施設の整備、適正処理のための規制強化
平成15年 不法投棄未然防止などの措置、リサイクル促進などの措置
平成16年 国の役割強化による不適正処理事案の解決、不法投棄に対する罰則強化
平成17年 大規模不法投棄への対応強化、無確認輸出の取り締まり
平成18年 アスベスト廃棄物の無害化処理の促進、誘導
平成22年 廃棄物の適正処理を確保するための対策強化、廃棄物処理施設の維持管理対策の強化、廃棄物処理業の優良化推進
平成27年 非常災害で生じた廃棄物処理の原則、手続きの簡素化、災害廃棄物処理に関する指針の策定、災害廃棄物処理の代行

 

参照元:環境省「廃棄物政策の変遷及びこれまでの取組等について」

 

以上に加え、平成29年にも改正が行われています。社会の変化に合わせて改正を繰り返してきた法律といえるでしょう。

 

産業廃棄物処理法(廃掃法)改正の背景

 

前述の通り、平成29年(2017年)にも産業廃棄物処理法は改正されています。

主な背景として次の2点があげられます。

 

1つ目の背景は、排出事業者から処分委託を受けた食品廃棄物が、処理業者により食品として転売されていたことです。

具体的には、堆肥化などを目的として処分委託を受けたもの(一部は廃棄処分)を処理業者が食品卸事業者へ転売していました。

転売された食品廃棄物は、複数の卸業者が介在し弁当店・飲食店・小売店舗などへ転売されていたようです。当然ながら、産業廃棄物処理法に抵触する恐れがあります。

 

2つ目の背景は、いわゆる雑品スクラップが不適切に保管などされていたことです。

雑品スクラップは、OA機器、家電などのスクラップを指します。

これらの中には、銅や真鍮など再利用できる資源に加え、クロムなどの有害物質を含むものがあります。

これまで、価値のあるものは産業廃棄物処理法の対象とは考えられていませんでした。

同法の規制を逃れるため、このような雑品スクラップを有価物(価値のあるもの)と主張する事業者が現れました。

不適切な保管による環境汚染や火災のリスクなどが顕在化したため、産業廃棄物処理法は改正されました。

 

産業廃棄物処理法(廃掃法)の改正で強化されたポイント

 

平成29年(2017年)の改正では以下の点が強化されています。

 

廃棄物の不適正処理に対する措置

 

不適正な産業廃棄物の処理に対応するため、一部の排出事業者に対し電子マニフェストの使用が義務付けられました。対象となるのは以下の場合です。

 

前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く。)の発生量が50トン以上の事業場から特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く。)の処理を委託する場合のみ義務対象となります。

引用:環境省「Q&A 電子マニフェスト使用の一部義務化等について」

 

対象となる排出事業者であっても、普通産廃・PCB廃棄物の処理を委託する場合は紙マニフェストを使用できます。

ちなみに、2017年に行われた産業廃棄物処理法の改正は2018年4月1日と2020年4月1日にわけて施行されました。

 

一部の改正については、一定の準備期間が必要と判断されたからです。

電子マニフェストの使用は、2020年4月1日から施行されています。

 

有害使用済機器の保管体制の義務付け

 

2017年の改正で、有害使用済機器の保管・処分体制の強化なども図られています。

 

産業廃棄物処理法第十七条の二で、有害使用済み機器の保管または処分を業として行おうとする者は、区域を管轄する都道府県知事に届出を行わなければならないことが定められました。

さらに、政令で定める基準に従い保管・処分を行わなければならないことも定められています。

必要に応じて、立入検査、改善命令、措置命令などを行えるようになっている点も見逃せません。

 

雑品スクラップの不適切な保管などを受けて、有害使用済み機器の保管・処分体制が見直されています。

 

参照:e-GOV法令検索「昭和四十五年法律第百三十七号 廃棄物の処理及び清掃に関する法律」

 

産業廃棄物処理等に関するルール

 

産業廃棄物はルールに従い適切に処理しなければなりません。押さえておきたいポイントは次の通りです。

 

排出事業者の責任について

 

最初のポイントは、廃棄物処理に関する責任の所在です。

産業廃棄物処理法第十一条の1で、事業者が自ら処理しなければならないと定められています。

したがって、排出事業者が責任をもって処理しなければなりません。

 

処理施設を保有していない場合は、収集運搬、処理を所定のルールに従い収集運搬業者、処理業者へ委託できますが、最終処分を終えるまでその責任は排出事業者にあります。

これらの事業者へ委託すれば終わりというわけではありません。

トラブルに巻き込まれる恐れもあるため、委託する事業者を慎重に選択して、委託後も適切に管理する必要があります。

 

参照:e-GOV法令検索「昭和四十五年法律第百三十七号 廃棄物の処理及び清掃に関する法律」

 

産業廃棄物処理基準と産業廃棄物保管基準について

 

排出事業者が自社で産業廃棄物を運搬・処理する場合は、産業廃棄物処理基準に従わなければなりません。

産業廃棄物処理基準は、政令で定める収集・運搬・処分に関する基準です。

また、産業廃棄物が運搬されるまでの間は、産業廃棄物保管基準に従い廃棄物を保管する必要もあります。

 

具体的には「囲い」「保管場所の掲示」などについてルールが定められています。

例えば、「囲い」では保管場所に囲いが設けられていること、「保管場所の掲示」では当該エリアが保管場所になっていることを表す掲示などが求められます。

単に、一カ所でまとめておけばよいわけではありません。

 

事業場外で産業廃棄物を保管するための届出義務について

 

事業場の外で産業廃棄物を自ら保管する場合、その旨を都道府県知事に届出なければなりません。

保管の対象は、環境省令で定めるものだけです。

ただし、以上のルールは、非常災害のため必要な応急措置として行う場合、環境省令で定める場合は適用されません。

届け出た事項を変更する場合も届出が必要です。

届出の期限は、保管を始めた日から14日以内となっています。

 

事業場の外で特別管理産業廃棄物(環境省令で定めるもの)を自ら保管する場合も同様です。

保管を始めた日から14日以内に都道府県知事へ届出を行わなければなりません(非常災害のために必要な応急措置、環境省令で定める場合は除く)。

また、届け出た事項を変更する場合も届出を求められます。

 

産業廃棄物運搬・処分委託に関するルール

 

ここからは、運搬・処分を委託する際に適用されるルールを解説します。

 

委託先業者の選定方法について

 

運搬は産業廃棄物処理法第十四条第十二項に規定されている収集運搬業者、その他環境省令で定められるもの、処分は同法同項に規定される処理業者、その他環境省令で定められるものに委託しなければなりません。

 

また、特別管理産業廃棄物の運搬に関しては、同法第十四条の四第十二項に規定される収集運搬業者(特別管理産業廃棄物収集運搬業者)、その他環境省令で定めるもの、処分に関しては同法同項に規定される処理業者(特別管理産業廃棄物処分業者)、その他環境省令で定めるものに委託する必要があります。

 

基本的には、都道府県知事の許可を受けた事業者へ委託する必要があるといえるでしょう。

 

参照:e-GOV法令検索「昭和四十五年法律第百三十七号 廃棄物の処理及び清掃に関する法律」

 

処理状況等を確認する努力義務について

 

運搬・処分を他の事業者へ委託する場合、排出事業者には2つの努力義務が課されます。

 

1つ目は処分状況の確認です。

 

2つ目は一連の処理工程が適切に行われるように必要な措置を講じることです。

特別管理産業廃棄物の運搬・処分を委託する場合も同様の努力義務が課されます。

つまり、処分状況を確認することと必要な措置を講じることを求められます。

 

マニフェストの交付義務について

 

運搬・処分を他人へ委託する場合、排出事業者は当該産業廃棄物の引き渡しと同時に、産業廃棄物の種類・数量、受託者の氏名・名称、その他必要事項を記載した産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなければなりません。

 

また、排出事業者はマニフェストの写しを、交付日から環境省令で定める期間(5年間)、保管する義務を負います。

交付を受けた収集運搬業者は、運搬を終えたときに必要事項を記載して所定の期間内にマニフェストの写しを交付者へ送付、交付または回付を受けた処理業者は処分を終了したときに必要事項を記載して所定の期間内にマニフェストの写しを交付者(回付の場合は回付したものにも)へ送付します。

 

電子マニフェストの一部義務化について

 

前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)発生量が50トン以上の事業場から、特別管理産業廃棄物(PCB廃棄器物を除く)の処理を委託する場合、電子マニフェストを使用しなければなりません。

 

電子マニフェストは、電子化したマニフェスト情報を、情報処理センターを介して排出事業者・収集運搬業者・処理業者でやり取りする仕組みです。

ただし、やむを得ない事由がある場合などは、紙マニフェストの交付も認められます。具体的な条件などは、環境省公式サイトなどでご確認ください。

 

参照:環境省「Q&A 電子マニフェスト使用の一部義務化等について」

 

多量排出事業者の産業廃棄物処理計画の提出・報告義務について

 

多量の産業廃棄物を排出する事業場を設置している事業者を多量排出事業者といいます。

 

多量排出事業者は、当該事業場に関する産業廃棄物の減量、その他処理に関する計画を作成して都道府県知事に提出しなければなりません。

また、計画の実施状況についても、都道府県知事への報告を求められます。

 

多量の特別産業廃棄物を排出する事業場を設置している事業者も、当該事業場に関する特別産業廃棄物の減量、その他処理に関する計画を作成し、これを都道府県知事に提出する義務、実施状況を報告する義務を負います。

 

都道府県知事は、上記計画ならびに実施状況を公表します。

 

産業廃棄物の輸入・輸出に関するルール

 

リサイクルなどを目的に廃棄物(産業廃棄物処理法で規定するもの)を輸入する場合、環境大臣の確認または許可が必要です。

また、産業廃棄物を輸出する場合、国内における処理などについて環境大臣の確認を受けなければなりません。一定のルールに基づき、輸出入を行う必要があります。

 

産業廃棄物に関するルール違反に対する罰則

 

ルールを守らず廃棄物の運搬や処理を行うと、立入検査、改善命令、措置命令の対象となる恐れがあります。

また、違反の内容によっては、罰金などを科されることもあるため注意が必要です。

 

主な罰則と違反の内容は次の通りです。

 

罰則の内容

違反の内容

1年以下の懲役または50万円以下の罰金

・秘密保持義務違反

1年以下の懲役または100万円以下の罰金

・産業廃棄物管理票に関連する違反(交付義務違反、記載義務違反、送付・回付義務違反、保存義務違反など)

・虚偽の産業廃棄物管理票の交付に関連する違反(虚偽の記載をして交付など)

・電子マニフェストに関連する違反(虚偽の登録・報告義務違反、虚偽の報告など)

2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれを併科

・罪を犯す目的で確認を受けず廃棄物輸出の準備をした(予備をした)者

3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれを併科

・委託基準違反(政令)

・環境大臣の許可を受けずに国外廃棄物を輸入した者

・不法な投棄を目的に廃棄物を収集・運搬した者

・不法に焼却する目的で廃棄物を収集・運搬した者

5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこれを併科

・委託基準違反(省令)

・環境大臣の確認を受けず廃棄物を輸出した者

・不法に廃棄物を投棄した者

・不法に廃棄物を焼却した者

 

 

許可を得ている処理業者が無許可の事業者に名義を貸して収集運搬を行わせた場合、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処される恐れがあります。

ルールを守って廃棄物を処理することが重要です。

 

産業廃棄物処理法(廃掃法)のポイント

 

ここからは、日々の業務で気を付けたいポイントを解説します。

 

処理困難通知に対応できる体制

 

収集運搬業者、処理業者は、委託を受けた廃棄物の収集・運搬・処理を適切に行うことが困難になった場合、排出事業者など(マニフェストを交付した者)に書面で通知しなければなりません。

これを処理困難通知といいます。

通知を受けた排出事業者などは、生活環境の保全上の支障の除去など、必要な措置を求められます。

したがって、対応できる体制を構築しておかなければなりません。

 

両罰規定の事前確認

 

従業員などが違反行為をした場合、本人だけでなく法人も罰せられます。これを両罰規定といいます。産業廃棄物処理法第三十二条で以下のように定められています。

 

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する

引用:e-gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」

 

従業員にもルールを遵守させる必要があります。

 

契約書の自動更新

 

産業廃棄物処理法は、社会の変化を受けて何度も改正されています。

自動更新契約を結んでいる場合は、契約書の内容に注意が必要です。

確認を怠ると、改正に対応できず法令違反となってしまう恐れがあります。

 

今後も改正される可能性があるため、確認を怠らないようにしましょう。

 

産業廃棄物処理法を遵守しましょう

本記事では、産業廃棄物処理法の目的や改正内容などについて解説しました。

 

主な目的は、適切な収集・運搬・処分により生活環境の保全および公衆衛生の向上を図ることです。

ルールに違反すると、罰金や懲役に処される恐れがあります。

詳細を確認して適切に廃棄物を処理することが大切です。

 

同法は社会の変化に合わせて定期的に改正されています。

定期的に確認して、改正内容に対応していくことも欠かせません。

 

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