インフラ企業としての社会的責任
~ 東邦ガスグループとして挑む環境保全と資源循環の取り組み ~
東邦ガス株式会社 様
東邦ガス株式会社は東海3県で都市ガス・LPGの供給をコア事業に成長し、現在は、電気事業、再生可能エネルギー、カーボンニュートラル支援、デジタルサービス、暮らしやビジネスサポートなど世の中をもっと快適にすべく、ガスエネルギー領域を超えた新たな未来への挑戦を続けています。
同社では2014年 にJEMSの「環境マネジメント業務支援サービス」を導入し、活用されています。同社の環境への取り組み、「環境マネジメント業務支援サービス」の導入経緯と導入効果について、東邦ガス株式会社 CSR環境部 環境グループ マネジャー 森本 隆之 様、同 シニアアドバイザー 梶川 等 様に詳しくお伺いしました。
東邦ガス株式会社
本社所在地:名古屋市熱田区桜田町19番18号
事業内容:ガス事業、LPG・その他エネルギー事業、電気事業、その他事業
社員数:939人(連結6,250人)(2024年6月末現在)
ホームページ: https://www.tohogas.co.jp/
1.未来の社会を動かす大きなエネルギーに
――東邦ガス株式会社について教えてください。
今から100年余前、「社会に対して、至誠奉公の覚悟を持ち、お客様への感謝奉仕の念を忘れてはならない」という矜持のもと、東邦ガスは設立されました。
東海3県で都市ガス・LPGの供給をコア事業に成長し、現在は、電気事業、再生可能エネルギー、カーボンニュートラル支援、デジタルサービス、暮らしやビジネスサポートなど、世の中をもっともっと快適にすべく、ガスエネルギー領域を超えた新たな未来へ挑戦を続けています。
東邦ガス本社
当社の歴史の中で、大きな環境変化はこれまで幾度も経験してきました。リスクに対する健全な危機意識はもちろん必要ですが、新しく飛躍していく一つのチャンスととらえ、挑戦していく気持ちが重要だと考えています。例えば、カーボンニュートラルの進展も、将来的には都市ガス需要に対してマイナスの影響が発生することも想定されます。一方ではクリーンなエネルギーである天然ガスが再注目される絶好の機会でもあり、他の化石燃料からの燃料転換や、当社の技術力を活かした省エネ提案、エネルギーサービス・エンジニアリングといった事業規模の拡大につなげていくことが可能です。
不確実性が高い時代だからこそ、当社グループが生き残っていくためには、我々が時代に合わせて変化していかなければならないという気持ちで、環境変化に柔軟に対応しています。次の100年へとつなげるためには、現状に満足することなく前に進み続ける力が、まちの、地域の発展を支え、さらには未来の社会を動かす大きなエネルギーになると考えています。
2.仕組みで守る法令遵守と適正処理
~ 従業員が安心して業務に取り組める環境づくりへ ~
――東邦ガスでは2014年にJEMSの「環境マネジメント業務支援サービス」を導入し活用されています。導入の経緯を教えてください。
当時の課題として、廃棄物の排出業務は日常的に行われる一方で、廃棄物に関する専門知識を持つ社員が各事業所にいるわけではなく、各事業所の担当者が業務の一貫として対応していました。
私たち環境部門は、法令を遵守し、廃棄物を適正に処理するよう、グループ全体に浸透させていく役割を担っていました。
そのため、毎年環境法令に関する研修を実施し、環境に関する自主監査を継続的に行い、各事業所が環境法令に適切に対応できているか確認してきました。自主監査は、まず各部署や事業所ごとに実施し、環境部門や専門性の高い各部署の二次監査員が二次監査を行う形式です。
こうした取り組みを続けてきましたが、廃棄物管理には複数の部署や社員が関わり、新入社員はもちろん、異動によって未経験の社員が急に担当するケースが発生します。
そうすると、廃棄物処理法は複雑かつ難解なことに加えて罰則が極めて重いため、従業員が安心して業務に従事することができません。そこで、教育や監査だけでなく、法令遵守をシステム的に実現する必要性を感じました。
――廃棄物を初めて扱う社員でも、安心して適正な処理ができるシステムが必要と考えられたのですね。
はい。国として電子マニフェストの活用も推進されていました。しかし、「JWNET」は、いわゆる電子マニフェストシステムです。廃棄物処理法に基づく法令遵守をシステム的に実現する機能が備わっていませんでした。
他社との情報交換を通じて、その点に不安を抱える企業が多いことが分かりました。このような状況を踏まえ、廃棄物処理法に基づいたチェック機能を備えた電子マニフェストシステムが必要だと考えるようになりました。
3.事業特性の課題をシステムで解決することが決め手に
当社に限らず、ガス会社の排出場所は事業特性があり、廃棄物の適正処理をする上で、解決が難しい課題になっています。多くの場合、産業廃棄物は工場や店舗など同一住所(排出事業場)から排出されることが一般的です。また大手ゼネコンの工事は長期間同一の住所(排出事業場)から排出されます。
CSR環境部 環境グループ
マネジャー
森本 隆之 様
しかし、ガス事業は、ガス工事が毎日異なる場所で行われ、同時に多くの場所で進行し、かつ、工期が短い工事も多くあります。つまり、廃棄物処理法において確認することが多く、かつリスクが高いという事業特性なのです。この事業特性上発生する課題に対応できるシステムを求めていました。
――JEMSの「環境マネジメント業務支援サービス」を知ったきっかけを教えてください。
導入当時の担当者が調べてJEMSを含む複数の会社のシステムをピックアップし、各社から提案を受けました。システムには以下のような特徴がありました。運営会社は、大別するとJEMSのようなIT企業か、産業廃棄物処理コンサルタント会社のどちらかでした。システムの特徴としては、コンプライアンスを重視したシステムか、利便性を重視したシステムのどちらかとなります。
当社では、先ほどお話しした当社の事業特性上生じる課題を解決できることが選定基準でした。
――ガス工事を毎日多くの場所で行っていることですね。
そうです。ガスや住設工事の産業廃棄物を法令遵守に則って電子マニフェストとして扱えなくては、システムを導入する効果が極めて限定的となってしまうためです。
――各社の対応状況はいかがだったのでしょうか。
JEMSを含めて各社のシステムでは当社の要望を満たすシステムはありませんでした。そこで、各社に打診したところ、課題を解決するシステム改修は難しいという回答でした。
――その中で、JEMSのシステムを導入した理由は何だったのでしょうか。
JEMSからは「弊社はIT企業です。お客様の課題を、ITを通じて解消するのが使命です。ぜひやらせてください。」というお返事をいただきました。課題解決に向けて伴走していただいことが1つ目の理由です。
2つ目の理由は、やはり廃棄物処理法をシステム的に遵守できる点です。これにより、従業員は安心して業務に従事できる環境が整います。
3つ目の理由は、インフラ企業として社会的責任を果たす責務を強く感じており、廃棄物処理における法令遵守はもちろん、環境保護への貢献が企業の社会的責任として不可欠です。JEMSのシステムは、これらの責任を果たすためにサポートしてくれるものと思ったためです。
以上、3つの理由から、導入の判断に至りました。
CSR環境部 環境グループ シニアアドバイザー 梶川 等様
――「環境マネジメント業務支援サービス」の導入はスムーズでしたか。
システム開発が伴うことと、各事業が大きな影響範囲を持つため、東邦ガスとして一斉に導入が難しく、まずは導入に取り組みやすい廃棄物に関する担当者が配置されている事業や部署から進めることにし、スムーズに取り組むことができたと考えています。
導入研修については環境部門で実施しましたが、JEMSからも講師に来てもらいました。当時は現在と違い、パソコンはデスクトップだったため、パソコンの操作実習のできる研修室で研修を行いました。
ガス工事に関する産業廃棄物については「エリア契約(エリア登録)」という機能をJEMSとともに開発を行い、約1年後に導入しました。おかげで懸念だったガスや住設工事の現場での廃棄物の排出に関しても、法令を遵守した電子マニフェストの交付ができるようになりました。
4.法令遵守と業務効率化
――「環境マネジメント業務支援サービス」の導入効果について教えてください。
(1)法令を遵守し、産業廃棄物の排出ができる
導入前から法令を遵守した上で廃棄物の排出を進めるべく、啓蒙だけでなく研修などを実施していろいろと手を打ってきました。ただ、紙マニフェストについて環境部門でチェックするのは、法令遵守の面でも、工数面でも厳しい状況でした。「環境マネジメント業務支援サービス」の導入で、環境部門でのチェックもほとんどなくなり、法令遵守がシステム的に実現され、大幅に業務が効率化されました。
(2)環境データの収集が容易になった
当社では、環境データとして、産業廃棄物の排出量などを公表しています。そうしたデータの集計がシステムでできるようになりましたので、環境部門でデータ集計をする手間が大幅に減りました。
――「環境マネジメント業務支援サービス」の運用で工夫されていることを教えてください。
当社では、産業廃棄物の排出にあたり、処理委託契約書を担当者と管理者が必ずチェックするようにしています。「環境マネジメント業務支援サービス」では、処理委託契約書について許可証との整合性をJEMSが行ってくれます。ただ、全面的に任せてしまうと担当者と責任者の廃棄物への興味関心が希薄になります。また、排出事業者責任は、排出事業者である当社にあることは変わりません。そこで、重要な項目については、引き続き担当者と管理者でチェックしています。
――関係会社の9社が「環境マネジメント業務支援サービス」を導入されていますが、どのようなかたちで導入されたのですか。
当社ではグループ全体の環境マネジメントの方針を確認し、グループ全体で環境に関する取り組みを進めていくための会議を年2回開催しています。こちらは経営層も参加している非常に重要な会議です。廃棄物の適正管理や資源循環については、その会議の場で説明しています。
その中でグループ各社が導入に関する費用対効果を判断し導入しています。まだ導入していない会社もありますので、引き続き、社会的責任を全うすべく推進して参ります。
5.資源循環分野の環境行動目標への寄与に期待
――「環境マネジメント業務支援サービス」の活用予定がありましたら教えてください。
今後、非財務情報の開示ルールが厳しくなる中、環境データの収集もより効率的に進めて行く必要があると考えており、「環境マネジメント業務支援サービス」で集計できるデータについてもうまく活用していきたいと考えています。
――JEMSへのリクエスト、期待などありましたらお聞かせください。
環境マネジメント業務支援サービスの中核であるGENESYS-ECOのルート登録の期間に関しての短縮を期待しています。工事では、どうしても突発的に直前にルート登録を依頼するケースが発生します。必要に応じて急ぎの対応をしてもらっていますが、可能であればルート登録期間が少しでも短縮してもらえるとありがたいですね。
また、資源循環の中で例えばプラスチック資源循環促進法の関係もあり、可能な限りプラスチックをマテリアルリサイクルする動きが出てきています。ただし、プラスチックは種類が多く、当社ではすべての情報を網羅することはできません。この種類のプラスチックならこの処理業者に委託するとマテリアルリサイクルができる、再生率が高いといった情報をご提供いただけると助かります。
情報提供や提案を通じて、当社グループの環境行動指針、環境行動ガイドラインに基づく、資源循環分野の環境行動目標に寄与してくれることに期待しています。