デジタル製品パスポートとは
2022/08/01
- 経営管理
- 循環型社会
デジタル製品パスポート(digital product passport)とは製品に紐づけられる使用材料や製造企業だけでなく、耐久性やリサイクルの容易性といった情報を付与することで、資源循環を促す仕組みとして期待されています。
デジタル製品パスポート検討までの経緯
デジタル製品パスポートの導入が検討されるようになった現在に至るまで、欧州では資源循環に対する施策を経済成長戦略の一つとして位置づけ、各種戦略にて検討されてきました。
2010年経済成長戦略「欧州2020」
2020年までの競争力強化・雇用戦略の一つとして、環境への影響を最小限にしながら、持続可能な資源利用をすることで資源効率を向上させることが明記された。
2015年「循環経済パッケージ」
「欧州2020」で策定した“資源効率の向上”を実現させるため、具体的な行動計画やリサイクル率・廃棄物削減率の目標値について定めた。
2020年「循環経済行動計画」
経済競争力と環境保護の両立を実現させるため下記4項目を行動の柱として設定。
①持続可能な製品を欧州の規範とする
・持続可能な製品政策に関する法案を作成
・製品の長寿命化、容易な再利用・修理・リサイクルの実現
②消費者の権利強化
・修理可能性や耐久性などに関する情報を閲覧可能にする
・持続可能性に配慮した選択をできるようにする
③資源循環への移行の可能性が高い産業においては具体的な施策を検討
該当産業は次の7つ(電子・情報通信機器、バッテリーおよび車両、包装、プラスチック、繊維、建設・建物、食品)で以下が施策例
・電子・情報通信機器においては製品の長寿命化と廃棄物の回収・処理の改善
・プラスチックにおいてはマイクロプラスチックと生物由来・生分解性プラスチックへの特別な注意
④ごみ削減に向けた取り組み
・ごみ分別と環境ラベルの欧州共通モデルの策定
・ごみ輸出の最小化と違法輸送対策
製品の情報を管理することで資源循環を推進する「デジタル製品パスポート」が検討されるまでの背景として、これだけの施策が導入されました。
欧州における現在のデジタル製品パスポート検討状況
2022年欧州委員会では「循環型経済行動計画」に基づく製品製造の枠組みとしてエコデザイン規則案を発表。製品における環境影響の8割を決定する設計段階において、製品の耐久性やリサイクルの容易さなど、エネルギーと資源の効率を高めるための新しい要求項目を検討しています。
想定される要求項目
耐久性、信頼性、再利用可能性、アップグレード性、修復性、メンテナンス、改修、リサイクルの容易性
(上記に加え、製品の種類ごとに固有の情報要件を設定予定)
これらの情報をデジタル製品パスポートとして製品へ付与することで、製造者にとってはサプライチェーン全体を通じた資源循環の構築に役立てられ、消費者にとっては製品の持つ環境への負荷情報を確実に知ることができます。
ドイツ政府によるデジタル製品パスポート開発への助成
ドイツ経済・気候保護省では、蓄電池の材料調達からリサイクルまで、ライフサイクル全体にわたる情報を管理可能なデジタル製品パスポート開発に対して資金提供を開始。フォルクスワーゲンやBMWといった民間企業や研究機関が参画するプロジェクトとして進められています。
まとめ
デジタル製品パスポートは欧州が率先して検討を進めており、少なくとも欧州へ製品を輸出する企業にとっては要件に沿った情報の整備が喫緊の課題となります。
国内においては国としてまだ具体的な検討はされていないものの、業界団体による競争力強化を目的とした検討は始まっており、今後の動向を注視する必要があります。
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