解説!!『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』②~廃棄物処理法とは異なる「多量排出事業者」について~
2022/01/24
2024/1/9
- リニアエコノミー
- 循環型社会
はじめに
2021年10月25日に掲載しました「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律とは?」について、4週にわたり詳しく解説します。
プラスチック資源循環促進法(通称:プラ新法)は、2021年6月に公布され2022年4月に施行が予定されています。プラ新法は、プラスチック使用製品の製造、販売、廃棄を包括的に規制する法律であり、プラスチックに関わるすべての業界、すべての業種、すべての製品、すべての廃棄物・副産物が対象になります。
今回は、このプラ新法に掲載されている「多量排出事業者」について、複数の法律で定義されている内容も踏まえて解説します。
「多量排出事業者」について
【廃棄物処理法における定義】
廃棄物に関わる仕事をされている方には、「多量排出事業者」と聞くと、廃棄物処理法(正式名:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に記載のある多量排出事業者を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
廃棄物処理法に定義されている「多量排出事業者」は、その事業活動に伴い多量の産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者であり、産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。)の前年度の発生量が1,000t(トン)以上、または特別管理産業廃棄物の前年度の発生量が50t(トン)以上である事業場を設置している事業者のことを指します。
設置している事業場の都道府県または政令市ごとに、産廃処理計画作成と提出、実施状況の報告を義務とする制度です。都道府県・政令市ごとに書類を提出する必要があるため、排出事業場単位で数値管理をされているもいらっしゃるかと思います。
以下、廃棄物処理法の該当条文の引用も掲載します。
“その事業活動に伴い多量の産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者として政令で定めるもの(次項において「多量排出事業者」という。)は、環境省令で定める基準に従い、当該事業場に係る産業廃棄物の減量その他その処理に関する計画を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。”
(引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律12条9項)
【食品リサイクル法における定義】
また、多量排出事業者と聞くと、食品リサイクル法(正式名:食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)の多量発生事業者を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。食品リサイクル法では、食品廃棄物等の前年度の発生量が100t(トン)以上の食品関連事業者は、食品廃棄物等多量発生事業者とされ、毎年度、主務大臣に対し食品廃棄物等の発生量や食品循環資源の再生利用等の状況を報告することが義務付けられています。
食品廃棄物は、排出事業者の業種によって事業系一般廃棄物に分類されることもあるため、マニフェスト制度をうまく活用できず、数値管理の難しさに課題を抱えているもいらっしゃるかもしれません。
以下、食品リサイクル法の該当条文の引用も掲載します。
“食品関連事業者であって、その事業活動に伴い生ずる食品廃棄物等の発生量が政令で定める要件に該当するもの(次条において「食品廃棄物等多量発生事業者」という。)は、毎年度、主務省令で定めるところにより、食品廃棄物等の発生量及び食品循環資源の再生利用等の状況に関し、主務省令で定める事項を主務大臣に報告しなければならない。“
(引用:食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律 第9条)
【プラ新法における定義】
そして、2022年4月に施行が予定されているプラ新法においても「多量排出事業者」が定義されています。
プラ新法にて定義されている多量排出事業者は、当該年度の前年度においてプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250t(トン)以上ある事業者とされています。この法律における事業者とは、フランチャイズチェーンであれば、各加盟会社を含めたチェーン全体として1つの事業者と見なされます。建設工事においては、元請け業者が下請け業者も含めたチェーン全体として1つの事業者と見なされます。
多量排出事業者となると、排出の抑制と再資源化等を推進するための取り組むべき措置が義務化され、取り組みが不十分の場合、指導・勧告の後、命令に違反したものは50万円以下の罰金(法人両罰)が課されます。
以下、プラ新法の該当条文案の引用も掲載します。
第44条
主務大臣は、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等を促進するため、主務省令で、排出事業者(中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第五項に規定する小規模企業者その他の政令で定める者を除く。以下この項、次条、第四十六条及び第五十八条第一項第三号において同じ。)がプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等を促進するために取り組むべき措置に関し、当該排出事業者の判断の基準となるべき事項を定めるものとする。
第46条1項
主務大臣は、排出事業者であって、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が政令で定める要件に該当するもの(以下「多量排出事業者」という。)のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の状況が第四十四条第一項に規定する判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるときは、当該多量排出事業者に対し、その判断の根拠を示して、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等に関し必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができる。
2項
前項に規定するプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量には、定型的な約款による契約に基づき、特定の商標、商号その他の表示を使用させ、商品の販売又は役務の提供に関する方法を指定し、かつ、継続的に経営に関する指導を行う事業であって、当該約款に、当該事業に加盟する者(以下この項において「加盟者」という。)が排出するプラスチック使用製品産業廃棄物等の処理に関する定めであって主務省令で定めるものがあるものを行う排出事業者にあっては、加盟者がその事業において排出するプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量を含むものとする。
3項
第一項に規定するプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量には、建設工事(廃棄物処理法第二十一条の三第一項に規定する建設工事をいう。)が数次の請負によって行われる場合における当該建設工事の元請業者(同条第一項に規定する元請業者をいう。)にあっては、当該建設工事に伴い生ずるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量を含むものとする。
4項
主務大臣は、第一項に規定する勧告を受けた多量排出事業者がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
5項
主務大臣は、第一項に規定する勧告を受けた多量排出事業者が、前項の規定によりその勧告に従わなかった旨を公表された後において、なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等を著しく害すると認めるときは、審議会等で政令で定めるものの意見を聴いて、当該多量排出事業者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。”
(引用:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律 第44条1項 第46条1項~6項)
○比較表「各法律における”多量排出事業者”の定義について」
法 律 |
数 量 |
提 出 先 |
廃棄物処理法 |
産廃:1,000t 特管:50t |
都道府県・政令市 |
食品リサイクル法 |
食品廃棄物:100t |
主務大臣 |
プラ新法 |
プラ製品産廃:250t |
- |
まとめ
プラ新法における、多量排出事業者の数値管理は、チェーン全体での管理となるため、より複雑化する可能性が高いと考えられます。グループ全体の一元管理ができるシステムにて、マニフェスト管理が必要になってくるかもしれません。
弊社のコンプライアンス管理を行うシステム「GENESYS-ECO」では、グループ全体のマニフェスト管理ができますので、プラ新法施行に合わせて社内のコンプライアンス管理(マニフェスト管理含む)を見直してみてはいかがでしょうか?
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