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ブルーエコノミーとは?推進されている理由も解説

2024/06/26

2024/9/3

  • 循環型社会

 

海洋環境や資源を保全しながら、サステナブルな経済活動の発展に貢献する、“ブルーエコノミー”をご存じでしょうか。
近年注目されている、循環型の経済を目指すサーキュラーエコノミーとともに、今後重要な位置づけになり得る経済活動への取り組み方の一つです。

 

そこで本記事では、ブルーエコノミーの概要と、推進されている背景をお伝えします。
環境に配慮した事業に取り組みたいとお考えの事業者様は、ぜひご覧ください。

ブルーエコノミーとは

 

海の環境を守りながら、海洋資源の持続的な利用を通じて、経済の発展を目指す海洋産業をブルーエコノミーといいます。
国や団体によって持続可能性の考え方が異なるため、国際的な定義はなく、概念の一種として捉えられることもあります。

 

これまでは海の資源を搾取して終わりでしたが、サステナブルな海洋産業を実現して未来の世代に残すためには、海洋資源の持続的な管理と保全が欠かせません。
これにより、長きにわたり経済の発展に貢献できる環境づくりが叶うわけです。

 

また、日本は四方を海に囲まれた海洋国家です。
海洋国家との親和性が高いブルーエコノミーへの活動は、社会全体、ひいては日本経済の成長に欠かせない要素だといえます。
持続的な社会の実現に際して、サーキュラーエコノミーとともに、ブルーエコノミーの実現に向けた取り組みは、必ず遂行しなければならない課題の一つです。

オーシャン・マリンエコノミーとの違い

ブルーエコノミーのほかに、海洋に関する経済活動の取り組みとして行われているのが、オーシャン・マリンエコノミーです。 よく混同されがちな両者ですが、“総経済的価値”といわれる、天然資源の価値を図る枠組みを用いることで、違いが明らかになります。

 

総経済的価値には、市場をもち、金銭的な価値がはっきりしている“利用価値”と、市場をもたず、現時点で価値をつけられない“非利用価値”があります。 これらはさらに細かく分類されているので、以下でご確認ください。

 

【利用価値と非利用価値の分類】

 

分類

概要

利用価値

直接価値

資源を直接使用することで得られる

間接的利用価値

資源を間接的に使用することで得られる

オプション価値

将来のために保持することで得られる

非利用価値

 

 

存在価値

資源が存在していること自体に見いだされる

遺贈価値

将来的に資源を使用することで見出される

 

上記の表を踏まえて、オーシャン・マリンエコノミーでは、利用価値のみを含んだ経済活動を行います。

一方、ブルーエコノミーでは、現時点で価値がなくても、将来的に消費できる資源にも価値があると考え、利用価値だけではなく非利用価値も含みます。

ブルーエコノミーの歩み

 

ここからは、ブルーエコノミーが世に広まった経緯を見ていきましょう。
主な道のりは、以下の通りです。

 

【ブルーエコノミーの歩み】

1987年 環境と開発に関する世界委員会の報告書にブルーエコノミーの概念が記される
1992年 “リオ地球サミット”にて採択された“アジェンダ21”に盛り込まれる
2002年 ヨハネスブルグ・サミット実施計画に明記される
2010年 グンター・パウリ氏によって、グリーンエコノミーに代わる経済モデルとして提唱される
2014年 国連環境計画(UNEP)が、“ブルーエコノミーの概念書”を公表する
2015年 SDGsが採択され、目標14“海の豊かさを守ろう”の達成にはブルーエコノミーが不可欠であると目される

 

以降では、ブルーエコノミーの概念の形成や、SDGsとの関係性をさらに深掘りします。

 

ブルーエコノミーの誕生から概念の形成

ブルーエコノミーの概念は、1987年の時点で生まれており、1992年には、持続可能な開発を実現するための政策である“アジェンダ21”に盛り込まれています。

さらに、2002年のヨハネスブルグ・サミットを経て、ブルーエコノミーの概念は世界で広く認知されていきました。

 

2010年には、サステナビリティ分野の起業家であるグンター・パウリ氏が、著書『The Blue Economy』を発表したことで、世界中から注目を集めるに至ったのです。

 

SDGsの目標達成にはブルーエコノミーが鍵となる

2015年に、持続可能な開発目標であるSDGsが採択されたことを受け、世界中で環境保全や持続可能性を重視した取り組みが行われています。

 

そのなかでも、目標14に設定されている“海の豊かさを守ろう”という項目は、ブルーエコノミーの概念に即したものだといえます。

つまり、SDGsの目標達成には、ブルーエコノミーの取り組みを活性化させることが欠かせないのです。

 

未来を担う世代のために、持続可能な海洋経済の確立を目指すブルーエコノミーは、今後もさらに重要な位置づけになっていくと予想されます。

 

関連記事:SDGsとは?17の目標と企業が取り組むメリットを紹介

 

ブルーエコノミーの対象となる産業

ブルーエコノミーの対象として、どのような産業が含まれるのでしょうか。 対象となる主な産業は、以下をご参照ください。

 

【ブルーエコノミーの対象となる産業の例】

  • 漁業
  • 海洋エネルギー業
  • 海底鉱物業
  • 海洋科学業
  • 海洋製塩業
  • 海運業
  • 海洋環境業

 

ブルーエコノミーの対象となるのは、海洋に関する産業として代表的な、漁業や海洋エネルギー業をはじめ、広範囲に及びます。

海洋の調査や管理に関わる産業も、対象産業の一つです。

ブルーエコノミーとブルーファイナンス

ブルーファイナンスとは、ブルーエコノミーを支援する目的で、金融機関が融資や投資などを行うことです。
これにより、海洋産業に従事する事業者は、ブルーエコノミーを推進する際の資金を調達できるというわけです。

 

ブルーエコノミーの実現で経済成長が見込まれる日本においても、ブルーファイナンスは徐々に広がりを見せており、今後のさらなる拡大が期待されています。

ブルーエコノミーが推進されている背景

ブルーエコノミーが重要視されている背景を知るためには、海洋環境の現状や、海洋産業の市場に目を向ける必要があります。

 

以下で、ブルーエコノミーが推進されている4つの理由を解説します。

 

理由①気候変動

ブルーエコノミーが推進される理由の一つに、大雨や洪水、海の温暖化などの気候変動による問題が挙げられます。

気候変動の主な原因は、化石燃料の燃焼に伴う、二酸化炭素の排出量の増加です。
これにより、地球温暖化が加速すれば、海面や水温の上昇、海水の酸性化など、海洋においても多くの悪影響が生じることになります。
なかでも、海水の酸性化が進むと、海の生態系全体に深刻な影響を与えかねません。

 

その点、ブルーエコノミーの一環で行われている洋上風力発電では、化石燃料を使わずにエネルギーを捻出できます。
このような取り組みを増やしていくことで、海洋環境の保全につながるというわけです。

 

理由②海洋のプラスチック汚染対策

海洋のプラスチック汚染問題を解決する糸口として、ブルーエコノミーの概念に沿った取り組みに、期待が寄せられています。

 

海洋にあるプラスチックごみの、実に50%以上が漁業ごみだといわれており、これらの回収やリサイクルが急務といえるでしょう。
しかし、ほとんどが未回収となっており、海洋汚染が進行しているのが現状です。
こうした問題を解消するために、ブルーエコノミーによる取り組みが推進されているわけです。

 

たとえば、漁業に用いるプラスチック製品を、自然にかえる素材に置き換えたり、回収やリサイクルに取り組んだりする活動が挙げられます。
海洋資源を守るためには、社会全体で海洋汚染問題に目を向けることが不可欠なのです。

 

理由③過剰漁業への対策

“過剰漁業”は、ブルーエコノミーの根幹にある、持続可能な海洋経済の発展を脅かす要因であり、世界的な問題となっています。
この問題に向き合い、ブルーエコノミーを推進して対策を講じることが重要です。

 

過剰漁業とは、農林水産大臣が設定する漁獲量を守らない漁業のことをいいます。
多くの場合が違法業者によるものであり、過剰漁業が続くと、魚類の減少を招くおそれがあります。

 

違法漁業の取り締まりを強化して、過剰漁業を撲滅すれば、持続可能な漁業の実現に一歩近づくかもしれません。

 

理由④市場規模の拡大

ブルーエコノミーが推進される背景には、市場規模の拡大が見込まれている点も挙げられます。

 

ひと口に海洋資源といっても、水産物をはじめ、石油やガス、再生可能エネルギーなど、その種類は多岐にわたります。
そのため、ブルーエコノミーを推進することで、多くの産業の成長が期待でき、雇用の促進にもつながるというわけです。

 

また、日本の排他的経済水域と領海を合わせた面積は、世界6位の広さを誇ります。
ブルーエコノミー市場の拡大が叶えば、海洋国家としての強みを遺憾なく発揮して、日本経済そのものの成長にも貢献できる可能性があるといえるでしょう。

ブルーエコノミーに関する日本の取り組み

 

日本が取り組む、ブルーエコノミーを支援する代表的な施策には、以下の3つが挙げられます。

 

施策①海洋基本計画

海洋政策を実施する際には、政府が定める“海洋基本計画”に則って遂行されます。
海洋基本計画とは、およそ5年ごとに更新される、海洋に関する取り組みの基本的な方針と、講じるべき施策を規定するものです。

 

この計画は2008年に始まり、2023年4月には、第4期の海洋基本計画が閣議決定されました。
第4期の基本的な方針として、“総合的な海洋の安全保全”、“持続可能な海洋の構築”が挙げられています。
そのなかで、着実に推進すべき施策の一つに、“海洋の産業利用の促進”が掲げられ、ブルーエコノミーの実現に近づくための指針を示しています。

 

参照元:第4期海洋基本計画の概要

施策②マリーン(MARINE)・イニシアティブ

2019年6月に、“大阪ブルー・オーシャン・ビジョン”といわれる、2050年までにプラスチックごみによる海洋汚染をゼロにするという目標が設定されました。
この実現に向けて、政府が立ち上げたのが、マリーン(MARINE)・イニシアティブです。

 

具体的には、以下の4つの要点に即した施策が提示されています。

 

【マリーン(MARINE)・イニシアティブの要点】

  • 廃棄物管理
  • 海洋ごみの回収
  • イノベーション
  • 途上国の能力強化

 

同イニシアティブのもと、施策を実施していくことで、ブルーエコノミーの実現にも貢献できるというわけです。

 

参照元:外務省 大阪ブルー・オーシャン・ビジョン実現のための 日本の「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」

施策③ジャパンブルーエコノミー技術研究組合の設立

ブルーエコノミーを進める技術の研究や開発を行う機関を、“ジャパンブルーエコノミー技術研究組合”といいます。
2020年7月に、国土交通省の許可を得て発足されました。

 

ジャパンブルーエコノミー技術研究組合では、海洋資源を用いた新たな技術の開発を進めています。
海洋資源の活用によって、二酸化炭素の増加に伴う気候変動の対策を講じる試験や研究を行っており、これは我が国初の試みです。

ブルーエコノミーの事例

ここからは、実際に進められているブルーエコノミーの事例を4つ紹介します。

 

なお、以下でお伝えする内容は、株式会社JEMSの事例だけではなく、一般的な有名企業や団体、地域の取り組みも含みます。

 

事例①トレーサビリティに対応した漁網由来のポリエステル樹脂の再利用

環境に特化したIT事業を展開するJEMSでは、帝人株式会社やチムニー株式会社と協同で、漁網由来のポリエステル樹脂の再利用に取り組んでいます。

 

ポリエステル製の漁網の多くは、産業廃棄物として埋め立て処理されるケースがほとんどです。
これを受けて、帝人株式会社は、不要となった漁網を回収、リサイクルして、配ぜん用のトレーを製造し、チムニー株式会社が運営する飲食店で再利用しています。
くわえて、株式会社JEMSが提供する“トレーサビリティシステム”によって、漁網の回収元や、CO2の排出量などを確認できるようになったのです。

 

トレーサビリティを強化することは、製造工程の透明化を図れるだけではなく、環境に配慮して生産している証明にもなります。

 

関連記事:トレーサビリティに対応した漁網由来の再生ポリエステル樹脂製の配膳用トレーの開発と展開 | 株式会社JEMS

 

事例②水産物の混獲を減らす取り組みを実施

日本の大手水産・食品会社であるニッスイグループでは、天然の水産資源の持続性を保つために、混獲を減らす取り組みを実施しています。
混獲とは、狙った魚のほかに、獲らなくてもよい生物を捕獲してしまうことです。

 

海外にあるニッスイグループの子会社では、漁具に小さな穴をあけて、小型の魚が逃げられるような工夫を施しています。
自然の恵みを活用している企業だからこそ、国内の枠にとどまらず世界に目を向けて、熱のこもった施策を実行できるのです。

 

このほかにも、ニッスイグループの施策は多岐にわたり、天然水産資源の持続的な利用に向けた課題に、積極的に取り組んでいます。

 

参照元:株式会社ニッスイ 「天然水産資源の持続的な利用」

事例③アフリカのブルーエコノミーを支援

開発途上国への国際協力を行っている独立行政法人国際協力機構(JICA)では、アフリカの水産事業の発展に取り組んでいます。

 

アフリカ大陸の北西部に位置するモロッコは、アフリカでも指折りの漁獲量と輸出量を誇ります。
しかし、水産資源に恵まれている一方で、いまだ苦しい生活を余儀なくされている漁師がいるのも事実です。
こうした状況を打破し、持続可能な漁業の発展と、漁師の安定した生活を実現するために、JICAではアドバイザーを派遣しています。

 

アドバイザーと現地民が一丸となって取り組んだ活動内容は、モロッコからアフリカ大陸のほかの国にも共有されます。
このような活動は、途上国同士の絆の形成にも一役買っているわけです。

 

参照元:JICA 独立行政法人国際協力機構 モロッコ向け技術協力プロジェクト討議議事録の署名

 

事例④海洋を活用した海洋温度差発電

沖縄県の久米島では、海水の温度差を利用した、“海洋温度差発電”によって、ブルーエコノミーを推進しています。

 

この発電方法は、CO2を排出しないだけではなく、海水を使った発電に成功した世界初の例として、各国から注目を集めています。
ほかの再生可能エネルギーとは異なり、気候に左右されないという点が特徴で、今後は諸外国でも取り入れられるかもしれません。

 

発電のために取水した海洋深層水は、水産業や農業などでの再利用が実現しており、これらを総じて“久米島モデル”とよばれています。
海洋を有効活用して、エネルギーの創出と産業の発展に寄与する久米島モデルは、高い経済効果と雇用効果が期待できるため、ブルーエコノミーの成功例の一つといえます。

ブルーエコノミーとは、海洋に関するサステナブル活動を通じ、経済の発展を目指す海洋産業のこと

今回は、ブルーエコノミーの概要と、推進されている背景を解説しました。

 

海洋資源の保全と、持続的な利用を通じて、海洋経済の発展を目指す海洋産業のことをブルーエコノミーといいます。
未来の世代に向けて、持続可能な海洋資源を残すための鍵は、ブルーエコノミーの実現にかかっていると言っても過言ではありません。

 

また、国内においてもブルーエコノミーの取り組みが活性化しており、今後ますます注目されると予想されます。

 

 


 

JEMSでは、サーキュラーエコノミーの実現に向け資源循環の価値証明サービス「Circular Navi」の提供を20224月に開始しました。

すでにプラスチックの資源循環をはじめとした実証実験などにご活用いただいています。

その他にも、一般廃棄物を削減するための回収量の見える化などさまざまな取り組みを支援しています。

 

今後も約30年にわたる廃棄物管理の分野で培ったノウハウとパートナーシップをもとに再生材や再生材利用製品の価値を最大化することで企業の循環型ビジネスの構築を支援していきます。

サーキュラーエコノミーに主体的に取り組もうとお考えの皆様のパートナーであり続けることを目指しています。

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