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日本がリードする脱炭素にむけた水素社会実現のための取り組みとは?

2021/11/10

2021/11/10

  • 脱炭素
  • 水素社会

はじめに

 水素とは、地球上でもっとも軽い気体で、化学式ではH2として表現されます。H原子は様々な元素と結合して存在しているため、様々な資源から水素を生成することが可能です。例えば、身近な水や、プラスチックからも、水素を作ることが出来ます。

また、水素はエネルギー変換効率が高く、エネルギー源としても有用です。燃焼すると水(水蒸気)となり、温室効果ガスとされる二酸化炭素や大気汚染物質を排出しません。そのため、化石燃料に代わる新たなエネルギーとして、水素の活用が期待されています。

脱炭素化に向けたサプライチェーンとは

 水素エネルギーとしての利用は、脱炭素社会の実現における重要な役割を担っています。しかしながら、脱炭素社会の実現には、利用時のみではなく生成過程や貯蔵・輸送過程においても、一貫した脱炭素化の取り組み(サプライチェーン)が必要です。

 

水素生成における取り組み

 水素の生成は、化学反応を用いて化石燃料(天然ガスやナフサ)から生成する方法が一般的です。しかしながら、この方法では生成時に、大量のCO2が排出されるため、脱炭素社会実現に向けた取り組みとしては望ましくありません。そこで、現在では、風力や太陽光といった再生可能エネルギー由来の電力を用いて、水を電気分解させる方法が普及してきました。一部地域の小水力発電所においては、発電した電力で水素を生成しトラック輸送することで、結果的に発電所までの電線網を張り巡らせる必要がなくなりコストや維持費を抑えられた事例もあります。

 その他にも、太陽熱や原子炉(高温ガス炉)を用いた熱分解による生成方法や、製鉄所でのコークス生成時に発生する水素を取り出す方法、家畜ふん尿からの水素を生成する方法などによりCO2の排出を抑制した生成方法の技術開発も進んできています。

 

水素の貯蔵・輸送における取り組み

 水素は「地球上で最も軽い(密度が低い)物質」のため、気体状で1㎥あたりの質量は約90gしかありません。一般的な気体と比較すると、空気の1/10、酸素1/15、二酸化炭素1/20程度です。 そのため、水素を生成後にそのまま輸送・貯蔵するとなると、かなりのスペースが必要になり非効率です。水素社会の実現には「水素を小さな容量に、いかに多く貯蔵できるか」が鍵であり、そのための研究と技術開発が進められています。

 最も一般的な貯蔵方法は、水素を圧縮し、高圧ガスとして輸送・貯蔵する方法です。元々、水素には金属に吸収される性質や金属を脆くする性質があるため、貯蔵用のタンクには通常の鋼鉄ではなく、特殊なステンレス鋼やアルミニウム合金などの材料が使われます。これに適した材料の技術開発も進んできています。

 また、金属に水素が取り込まれる現象を利用してプラチナやパラジウムなどの金属に水素原子を吸蔵(個体に気体を吸収される方法)させて輸送する方法もあります。水素を吸蔵した金属は「水素吸蔵合金」と呼ばれ、常圧で水素を貯蔵できるため扱いやすく、ガス状態のときと比較して体積は約1,000分の1になるため、輸送・貯蔵効率が向上します。ただし、運搬時には金属そのものの重量も運搬することになるため、軽量金属の素材開発も進められています。

 その他にも、パイプラインで都市ガスのような輸送・貯蔵を可能にするための技術開発や、水素を低温にして液化し輸送する技術開発も進んできています。

 

③水素エネルギーを利用した製品開発

 現在、水素エネルギーを利用した燃料電池車が開発されています。実際に燃料電池を搭載した乗用車やゴミ収集車、フォークリフトなどが実装走行を始めています。東京都では、都内を走る都営バスで、燃料電池バスへの切り替えを進めており既に84台(20209月現在)導入され、運行されています。

 また、水素を供給する水素ステーションも増えてきており、202012月現在、日本全国で137ヶ所、東京都内で21ヶ所の水素ステーションが整備されました。

(参考:環境省_水素社会実現を目指す官公庁の取組_脱炭素化にむけた水素サプライチェーン・プラットフォーム (env.go.jp)

まとめ

 化石燃料に代わる新たなエネルギーとして注目されている水素。脱炭素社会を実現するために、より一層重要な役割を担っていくことが予想されます。特に課題となっていた、安定的な製造と輸送手段の確保についても、技術の進歩により解消されつつあります。国と地方自治体と企業がタッグを組み、脱炭素に向けた一貫した取り組み(サプライチェーン)を進めていくことで、水素が主な燃料源となる日が訪れるかもしれません。今後の技術革新からも目が離せませんね。

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